フレンチ/東京のレストラン

ラール・エ・ラ・マニエール(銀座)

珠玉の多皿料理を繰り出す、今人気のフレンチ。心地良いのは銀座ならではの気品ある時間が楽しめます。この冬、グルメなカップルはぜひ押えておきたい一軒かも知れません。

嶋 啓祐

執筆者:嶋 啓祐

フレンチガイド

銀座

一時の快楽に溺れるならこのレストランは最高だろう。メニューには8品程度の10500円のコースがメインとあるが、実際には13品もの料理が運ばれてくる。何を食べているかはっきりわかるものの、あとから思い出せない不思議な料理。お伽の国の料理なのか高天原の天空料理なのか、さあどっちだ?!
ってどっちも地に足がついてはいないが、素材はもちろん極上のものだろう。出所もはっきりしている。最近開店した多くのお洒落なレストランは北埼玉や茨城、そして遠くは青森や京都の農家から野菜や肉を直接買い付けている。その場所に実際に足を運び、生産者と対話を重ね、納得のいくものを仕入れている。
ラール・エ・ラ・マニエール
内装の細部はかなり凝っているつくりになっている

と、いきなり本題にはいってしまったが、話をちょっとだけ戻そう。

新しいが目立たぬビルの階段を降りるとカウンター前に気持ちばかりのウエイティングソファがある。そこに座って仲間を待っているのはちょっとつまらない。玄関前の小さなスペースより、私はダイニングで飲んで待っていたい派かも知れない。

予約時に料理の内容を伺ったが、10500円のコースで十分とのこと。もとサンス・エ・サブールの支配人だった吉岡氏。彼の口からは暗に、この価格で十分にびっくりさせてあげますよ、と心地よい挑発だ。それは繰り出された料理よりも研ぎ澄まされたささやきだった。

ダイニングは冒頭の通り薔薇の花でお迎えされ、ゲストが揃うと華は真ん中にまとめられ「おお~」とまずは最初の歓声。
薔薇
最近流行のお皿は立体的

カトラリーも進化しているというべきか、選ぶほうも皆同じになってきたというべきか。レストランJの魚料理に出てきた立体的な皿(というより巨大なグラスか?)はここではテーブルセッティングのオープニングメンバーとして純白のクロスの上に鎮座。真っ赤なバラは日本を代表する文化的歓楽街、銀座を表現するにはぴったりだ。
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