ホンモノはいつもシンプル
物件を見つけるのには相当の苦労があったようだ。約一年かけて物件を探したというが、ここは地下物件ということで、最初は躊躇したという。しかし先入観なく見てみると天井の高さが気に入りすぐに契約。大家さんがおでんの名店お多幸という飲食つながりも縁あってのことだろうか。冒頭にも書いたが、メニューは本当にシンプルだ。例えば「仔牛肩肉のタジン」「シャラン産鴨モモ肉のグーラッシュ(煮込)」といったように素材と調理法が極めてシンプルに描かれている。前菜もそうだが、何を食べているのかがはっきりわかるシンプルな料理だ。ソースを多用しないため、これがフランス料理かという見方もあるが、そんな枠に捉われない独自の領域を作り上げたこと自体が和知氏の繰り出すフランス料理の世界そのものだ。
フォアグラバーガーは気になるメニューの一つ |
定期的にフランスに足を運び、新しい料理に触れるという。しかしレシピなど一切持ち帰ることなく、本場の空気を吸うことによって自分の世界を発展させるきっかけを掴むことに意味があると話す。そうした中で新しいスパイスの使い方やメニューの組み方のヒントを得るという。「料理人は何度もフランスに行くべきだ。」技術は日本で学べるが、空気感や「気」は絶対に現地でしか得られないからだ。これはブルギニオンの菊地氏と同じ意見。
レバー、ハツ、ハラミや頸肉など羊の内臓を使った前菜は優しく、同時に強烈だ。軽くマディラでマリネして火を通した加減もちょうどよく、部位一つひとつが独立した味わいを醸し出し、そしてそれらが舌の上でとろけて交じり合う。最初の食感は優しく、後には強烈に舌に残る。ワインが欲しい。ワインと共にこの料理は旨みが更に拡がる。これぞあるべき内臓料理の見本とも言えるだろう。
見た目よりもエネルギッシュな料理だ |
仔牛のカツレツは見たとおりの豪快さ。春キャベツはピクルス仕立てになっている。そして西洋山葵を混ぜ込んだ摩り下ろしリンゴがいいアクセントになる。それは食べ飽きることなく完食させる欠かせないもの。カツレツの添え物にちょっと手を加え、豪快さのみならず小技も冴えるところが実に楽しい。
大きさにびっくりするが意外に食べ易いのは仔牛だからか |
多くのレストランが口を揃えて素材にこだわると話す。しかし産地に出向き、吟味し、比較し、料理に仕上げている料理人や経営者はどれだけいるだろうか。むろん、こだわりにもレベルがあるが、マルディグラの料理は特徴ある素材とシンプルな調理法がいかに心地よいかを教えてくれる。
■マルディグラ(銀座)
東京都中央区銀座8-6-19 B1
03-5568-0222
営業時間/18:00~24:00LO
定休日/日
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