フレンチ/東京のビストロ

ノリエット(下高井戸)(2ページ目)

料理人を目指した永井紀之氏はふとしたきっかけからパティシエを目指すことになる。行き着いたのは季節感あるフランス菓子と惣菜の世界。下高井戸が誇る名店ノリエット。

嶋 啓祐

執筆者:嶋 啓祐

フレンチガイド

料理人から菓子の世界へ

ノリエットの開店は1993年。その後新宿の高島屋にも出店しているが、堅実にフランス菓子と向き合う姿勢にファンも多い。店内は明るく、ケーキ、焼き菓子、コンフィチュール、パンが並び、テラスや奥のカフェスペースではコーヒーと共に店内のフランス菓子を楽しむことができる。

マカロンが載ったピスタチオのムースは中にショコラが詰められる。鮮やかな緑が初夏にぴったりで、その美しさにもつい見とれてしまう。口の中に力強い甘さが拡がってくる「シシリア」という名の作品は地中海を想像するに足る陽気で明るいムースだ。
ノリエット

大きなブルーベーリーが載った「ダリダ」。ホワイトチョコのムースやパイナップルのソテー、グロゼイユのゼリーが重なり、複雑さの中に爽やかさと上品な甘さが感じられるもの。
ノリエット

パティスリーのデザートはフランス料理のコースのラストを盛り上げる「デザート」とは似ていて異なるものだ。前者は持ち帰って家庭なりで食べるもの、後者はその場で食べるもの、でなくてはならない。

ノリエットのフランス菓子はアタックが意外に強い。そして食後感はほんのりと心地よい甘みが残る。とても長く残るのでそれをコーヒーの苦味で消してしまうのはもったいないと思うほどだ。

冒頭にも書いたが永井氏は世田谷通り沿いにビストロ「ル・プティ・リュタン」を経営している。下高井戸からは世田谷線1本で行ける距離だが、もうしばらくすると下高井戸に引っ越して来るという。下高井戸には洋食系のレストランは皆無だし、気軽にワインを楽しめるところは少ないので貴重な一軒になるかも知れない。
ノリエット
家庭で楽しむフレンチの前菜を意識した「料理」が並ぶ。

最初のキャリアは料理人としてスタートし、半年で洋菓子の世界へ。28年という歳月をフランス菓子の世界で過ごした永井氏は闇雲に自分のブランドを掲げた支店を出すことはしていない。目の届く範囲でフランス菓子の世界を広げていく。

その流れの先にあるのがビストロ「ル・プティ・リュタン」。一度は志した料理人への道。余裕が生まれた先にはフランス菓子の加えて「フランス郷土料理」が見えるのだろうか。店頭に並ぶ惣菜系はそこで作られたものが所狭しとならんでいる。
永井紀之

とにかく話す視線には鋭く、そして勢いがあった。何かを極めて突き抜けた視線というのか、そしてまだまだやり足りないことがあり、それを求めていく姿勢が凛として漂う。

フランスの伝統菓子を伝え続けるノリエット。そして新しくできるビストロ。下高井戸の美食の灯火を煌々と照らし続けてくれることを近隣住民の一人として切に願うばかりである。
ノリエット(下高井戸)
東京都世田谷区赤堤4-40-7
地図
営業時間 9:00~19:00 
電話   03-3321-7784
水休

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※メニューや料金などのデータは、取材時または記事公開時点での内容です。

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