フレンチ/東京のビストロ

エクセルABE(本所吾妻橋)

浅草から吾妻橋を渡った先に、ほんのりとした下町の香り漂うフレンチ発見。多分まだ知られていない和みの空間は老練なシェフがひとりで紡ぐフレンチの伝統そのものだ。

嶋 啓祐

執筆者:嶋 啓祐

フレンチガイド

本所吾妻橋

 アサヒビール本社ビル上にある黄金色の「泡」をモチーフにしたオブジェ。フランスの著名なデザイナー、フィリップ・スタルク氏によるもので、「炎のオブジェ」と呼ばれている。スタルク氏はもう20年近く前に白金のOZAWAをデザインしたことでも知られている。
フランス料理
メニュの多くは表に表示されている

最近とある酒屋に出掛けた時にたまたま見つけたのが今回ご紹介する「エクセルABE」だ。開店前の時間だったが、中を覗くとシェフがひとり仕込みに没頭している。オープンキッチンを見渡すカウンターが非常に印象的で、奥に段差のあるテーブル席も垣間見える。

シェフがひとりで切り盛りするレストランだ。温厚そうな、でも頑固そうな、料理の世界に没頭してきた年輪を醸し出す。
フランス料理
おつまみとしては十分

寒い夜にカウンターを指定して予約を取る。メニューは伝統的なフランス料理メニューに加え、ゲストが好きであろう洋食メニューやパスタも並ぶ。

オードブルの盛り合わせは、野菜だけのテリーヌが光る。そういえば昔の結婚披露宴の料理に出ていたような気がする色合いだが、一つひとつの素材は口にするにはそこそこいい状態でバランスよく仕込まれている。ワカサギのエスカベッシュも爽やかさが引き立ち、シャルドネとのマリアージュにより味わいはふわりと膨らんでいく。驚きや面白みという世界とはちょっと違った堅実な味わい。

ひとりで切り盛りしているとは思えない段取りのよさで、料理が滞ることはない。丁寧な盛り付けとほわんとした優しい味わいが特徴か。
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