フレンチ/東京のレストラン

ブノワ(青山)(2ページ目)

親会社の破綻から3か月の冬眠を経てスピード復活したブノワ。トラディショナルガストロノミーの真髄を感じさせる料理を繰り出すのはモナコからやってきた必殺仕事人「ケイコジマ」だ。

嶋 啓祐

執筆者:嶋 啓祐

フレンチガイド

三ツ星の二番手

小島景
見た感じはお坊さんのように見える小島シェフ
エグゼクティブシェフの小島景氏は申し分のないキャリアの持ち主。ニースのドン・カミーヨを経てモンテカルロはルイ・キャーンズで料理長のフランク・セルッティ氏の下で二番手を努めてきた。世界中からやってくるVIPをもてなし、長きに亘りミシュランの三ツ星を誇る超高級ガストロノミーレストランを切り盛りしてきた。これだけ聞くと日本人としてはフランスで最高のポジションを経験してきたといってもいいだろう。しかし、フランス生活が長かったために日本での知名度は低いがどこぞの三ツ星で野菜の仕込みだけやらされていた料理人とは明らかに違うことだけは確かだ。

ルイ・キャーンズでの仕事は、世界の大富豪を相手に分単位で最高の料理を提供するためにとてつもないプレッシャーが要求されたと話す。頂点を極めたレストランでの経験がこれからどう活かされていくのか非常に楽しみではある。

アラン・デュカス氏の原点ともいえる地中海料理。それは師であるアラン・シャペルの季節の素材を活かすという基本的な考えのもと、「何を食べているかわかる料理」に行き着く。

フランス料理
パーティー料理も小技の中に高いクオリティがある
以前のブノワはビストロシックという新しいコンセプトで望んだが、残念ながらその考えは浸透することなく終わってしまった。しかし、新ブノワは「地中海を中心としたデュカスのフランス地方料理」として、明確にレストランであることを謳っている。

値段設定もランチは3300円から。ディナーも7000円からのコースが並ぶ。10階のカフェではグラスワインや軽い食事を楽しむことができる。

ブノワは形作るほとんどすべてのものがフランスから運ばれ、フランスの職人の手によって装飾が施され、それは再スタートを切った今も変ることがない。むしろ時間と共に「いい味」に変っていくように作られている。私がおよそ東京で知る中でブノワは一番フランスに近いと言っていい。

フランス料理
モナコの郷土料理「バルバジュア」
いくつかの料理をいただいたが、一言でいうと「奥行きのあるわかり易い料理」。この奥行きという言葉を見つけるきっかけは小島シェフの調理技術に他ならない。

開店レセプションの時の小さな料理の中にトリュフ入りのクリームスープがあった。多くのゲストはその料理に気付いたかどうかはわからないが、現代フランス料理のすべてがその小さな器に閉じ込められていた極め付けの料理。覚醒と言う言葉はこの瞬間にあるというくらい私は興奮を隠せないでいた。

フランス料理
特にヒヨコマメのペーストが楽しい味わいだ
アミューズはモナコ特有のおつまみ「バルバジュア」。これは中にチーズが閉じ込められた揚げラビオリのようなもの。ちょっと熱めだがサクッとした食感の中にフランスの田舎の味わいを忍ばせる。

ヒヨコマメとポークリエットのおつまみも用意される。これが美味しいからといって食べ過ぎには気をつけたい。パンは天然酵母のパン、オリーブ入りのパンなど3~4種類ほどサービスされる。この辺りは三ツ星レストラン並のサービスではなかろうか。
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