最高の鴨が最高の技術で焼きあがる |
親愛と信頼のキーワード
さて、メインはマグレ鴨のローストだ。ここではカンテサンスの時間をかけた肉の火入れの話に花が咲く。鴨は皮の焼き加減で味の印象が大きく変る。鴨肉に潜む独特の鉄っぽさが消えないように、そして皮の食感を残し、そこに胡椒とスパイスを忍ばせる。ナイフを入れたときに僅かに滴る肉汁。心ときめく瞬間だ。下村氏自身、料理のスタイルが少しづつ変ったという。現代フランス料理の流れにあわせるようにバター、そして生クリームを極力使わずにこれまでどおりインパクトのあるソース、料理を作り出す。
フォン一つとっても軽くシンプルに作り上げる。しかしそれによって出過ぎる旨みを消し去り、必要な美味しさのみ残す。極端に旨みを感じさせず、一瞬の味わいを記憶に残る旨みとしてゲストの記憶に残す料理。
確かにこの2皿だけでも無駄なものはなく、必要なものだけが皿を彩る。鴨の料理は肉の旨みを活かすためのシンプルなソースと香辛料。ズッキーニの葉に包ませた小さなサプライズ野菜。そして蜂蜜を忍ばせたタップナード。鴨肉に対して、この蜂蜜の甘さを感じさせるタップナードが隠れたソースだったのだ。
情報を遮断した瞬間、気持ちは軽くなるはずだ |
そんな便利な道具が、フランス料理店ではしばしば厄介な騒音を撒き散らしてしまう。いや、ケータイは何も悪くないのだ。使う人の使い方の問題。
私はレストランではケータイはオフにしている。その方が気が楽だからだ。マナーモードにしておくと、ぶるっと震えるために気になってしょうがない。切ったからと言ってその後の人生に大きな影響を及ぼすような電話は、たいていの場合かかってこないのである。
席について「おっと携帯の電源切らなきゃね」というと、それは「これからの時間はあなたと二人だけということなんですよ」とまあ、そこまで押し付けることでもないが、相手に対する親愛と信頼のキーワードになるような気もするがどうだろうか。
甘さ以外の様々な味わいが散りばめられる |
■エディション・コウジ・シモムラ
東京都港区六本木3-1-1 六本木ティーキューブ1F
03-5549-4562
ランチ 12:00~13:30(LO)
ディナー 18:00~21:30(LO)
不定休
地図
東京メトロ 南北線六本木一丁目駅 1番出口方面
六本木ティーキューブ連絡口直結 徒歩3分
東京メトロ 日比谷線・都営地下鉄 大江戸線 六本木駅 5番出口 溜池方面へ徒歩6分
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