フレンチ/東京のレストラン

エディション・コウジ・シモムラ(六本木)(4ページ目)

切れ味鋭い下村氏の料理をいただきながら、フランス料理を楽しむためのマナーについて、少し考えてみました。

嶋 啓祐

執筆者:嶋 啓祐

フレンチガイド

フランス料理
最高の鴨が最高の技術で焼きあがる

親愛と信頼のキーワード

さて、メインはマグレ鴨のローストだ。ここではカンテサンスの時間をかけた肉の火入れの話に花が咲く。鴨は皮の焼き加減で味の印象が大きく変る。鴨肉に潜む独特の鉄っぽさが消えないように、そして皮の食感を残し、そこに胡椒とスパイスを忍ばせる。ナイフを入れたときに僅かに滴る肉汁。心ときめく瞬間だ。

下村氏自身、料理のスタイルが少しづつ変ったという。現代フランス料理の流れにあわせるようにバター、そして生クリームを極力使わずにこれまでどおりインパクトのあるソース、料理を作り出す。

フォン一つとっても軽くシンプルに作り上げる。しかしそれによって出過ぎる旨みを消し去り、必要な美味しさのみ残す。極端に旨みを感じさせず、一瞬の味わいを記憶に残る旨みとしてゲストの記憶に残す料理。

確かにこの2皿だけでも無駄なものはなく、必要なものだけが皿を彩る。鴨の料理は肉の旨みを活かすためのシンプルなソースと香辛料。ズッキーニの葉に包ませた小さなサプライズ野菜。そして蜂蜜を忍ばせたタップナード。鴨肉に対して、この蜂蜜の甘さを感じさせるタップナードが隠れたソースだったのだ。

携帯電話
情報を遮断した瞬間、気持ちは軽くなるはずだ
最後に携帯電話。インターネットという産業革命以来とも言えるこの革命的な道具の次にやってきたケータイという便利な機械。何をおいてもケータイの支払だけは滞ることがないと言われる、自分と外界を繋ぐ唯一の道具と言う人も多いのではないだろうか。

そんな便利な道具が、フランス料理店ではしばしば厄介な騒音を撒き散らしてしまう。いや、ケータイは何も悪くないのだ。使う人の使い方の問題。

私はレストランではケータイはオフにしている。その方が気が楽だからだ。マナーモードにしておくと、ぶるっと震えるために気になってしょうがない。切ったからと言ってその後の人生に大きな影響を及ぼすような電話は、たいていの場合かかってこないのである。
席について「おっと携帯の電源切らなきゃね」というと、それは「これからの時間はあなたと二人だけということなんですよ」とまあ、そこまで押し付けることでもないが、相手に対する親愛と信頼のキーワードになるような気もするがどうだろうか。

デザート
甘さ以外の様々な味わいが散りばめられる
メインの鴨の味わいがワインとともに一体になり、心地よさがゆるゆると流れる頃にデザートが登場する。塩を効かせたカカオのムースには生クリームは使われていない。黒オリーブとオリーブオイルが全体をふんわりと包み込み、単に甘さだけではない新しい味覚の境地に引きずり込まれていく。

エディション・コウジ・シモムラ
東京都港区六本木3-1-1 六本木ティーキューブ1F
03-5549-4562
ランチ   12:00~13:30(LO)
ディナー  18:00~21:30(LO)
不定休
地図
東京メトロ 南北線六本木一丁目駅 1番出口方面
六本木ティーキューブ連絡口直結 徒歩3分
東京メトロ 日比谷線・都営地下鉄 大江戸線 六本木駅 5番出口 溜池方面へ徒歩6分

お店のホームページ

フレンチガイドのメルマガ購読はこちらから
  • 前のページへ
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※メニューや料金などのデータは、取材時または記事公開時点での内容です。

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます