フレンチ/東京のレストラン

エディション・コウジ・シモムラ(六本木)(3ページ目)

切れ味鋭い下村氏の料理をいただきながら、フランス料理を楽しむためのマナーについて、少し考えてみました。

嶋 啓祐

執筆者:嶋 啓祐

フレンチガイド

フランス料理
色合いもまさに夏

皆で一斉にカメラを構えるのはやめよう

ビーツでほのかに色をつけたコンソメは夏を感じさせるリゾートの湖か。じっくりと濾されたビーフコンソメに添えられたウニがクリーミーさを運び込む。鮮やかな色使いとコンソメの長い余韻。そしてウニと溶け合う贅沢なマリアージュ。隙のない色と味わいのコントラストに表現する言葉を見つけるのは難しい。

「ウチは個室も含めて全席禁煙にしているんです。」公共の場所では禁煙という世の中の流れに沿うという。個室でも翌日に匂いが残るという理由で禁煙を貫いている。喫煙者には耳の痛い話だが、レストランはパブリックな場所だ。煙が苦手という人がいる以上、隣の人、向かいの人、知らない人であろうと共に空間を共有するゲストがいるところで香りを出すものは料理とワインしかないのである。

デジカメ機能が携帯にまで搭載された現在、料理の写真を撮ることについては私もかつて「料理の写真を撮るな!」というタイトルで記事にしたことがあった。それについてはどう考えているのだろうか。

「料理が運ばれたときに、美味しそう!と反応し写真を撮られる方をこちらから止めることはできません。」美味しいものの記憶を残したいという行動を止めることはレストランとしていかがなものか、と下村氏は語る。いつまでも語り合う料理であり続ける材料として料理の写真は必要かも知れない。10年前には考えられなかった「ゲストが料理の写真を撮る」ということは今や、多くのレストランで見ることができる極めて一般的な風景になった。

が、しかし。

常識ある方々はまさか携帯電話で料理の写真を撮ってはいないはず。デジカメでもストロボは焚いてはいないはず。そしてテーブルを囲む全員でデジカメを出して、撮影会は絶対にないはずだ。

レストランはパブリックな場所。デジカメの「ぴゅう」という音を聞いた隣のゲストはどう思うだろうか。ストロボを焚かれた光で隣のゲストの会話はまず間違いなく途切れることになる。

そしてなによりも、メートル・ド・テルの見る目はソワニエからパサージュに一気に格下げになることだろう。「みっともない」と言う言葉はそのためにあるようなものだ。

ではどうしたらいいか。

デジカメでさっと一瞬で撮ること。角度を変えて何枚も撮ってるような恥ずかしいことは避けたい。そのためには一回で一番いいアングルで撮る練習が必要だ。一回で撮ることができるほどスマートなことはない。大勢で行った場合は撮った方にあとから送ってもらえればいいだけの話。デジタルのメリットはそこにある。夜景に見とれている彼女の唇を一瞬で奪うかのようにやればいいのである。

下村氏は語る。「たまにですが、一眼レフを持ち込んで立ち上がって撮影会を始められる方もいるですよね」と笑う。高性能のデジタル一眼レフはレストランという超アナログな場所には必要がない。



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