フレンチ/東京のレストラン

エディション・コウジ・シモムラ(六本木)(2ページ目)

切れ味鋭い下村氏の料理をいただきながら、フランス料理を楽しむためのマナーについて、少し考えてみました。

嶋 啓祐

執筆者:嶋 啓祐

フレンチガイド

フランス大使館
右端が下村シェフ。フランス大使館の厨房にて

予約の際には

ベルナール・ロワゾーやトロワグロなどフランスの名だたる料理人の元で修行と鍛錬を積んだ下村氏は乃木坂の歴史あるレストラン・フウでその才能を開花させている。昨年、一年近くの時間をかけて六本木一丁目に自らのレストランを開店。「料理を作る」ということにのみ専念していた時代とは雲泥の違いがあるという困難な現実を高いレベルで乗り越え、実に隙のない完璧な料理を作り上げる。

かつてフランス大使館で行われたイベントで20数名の料理人を率い、200人以上のゲストを魅了した下村氏の姿は凄まじかった。宴会料理でありがなら、モダンでかつ小さなピンチョスであっても旨みを凝縮させて強いインパクトを与える技術に、写真に写るとき以外あまり笑わないアラン・デュカスさえも笑顔で料理を評価した程の完成度。

しかし、今は制限のない自分だけの城で思う存分に腕を振るう。

「お客様は楽しんでいるか?」ポール・ボキューズが厨房から支配人に必ず聞く言葉だ。下村氏も同じ気持ちで厨房から時折ダイニングに視線を向けるという。

「お客様にはとにかくレストランで心から楽しんでいただきたい。」と話す下村氏の考えのベースにあるのは店のスタッフとお客様とのコミュニケーションだ。そのコミュニケーションはゲストからの予約電話から始まる。

フランス料理
カトラリーもすべてシェフが選ぶ
レストランにとって予約は玄関だ。レストランはゲストがどういう状態で何を望んでいるのかを探らなくてはいけない。ゲストはその日にどんな楽しみ方ができるかどんどん聞いたほうがいい。接待なのか、デートなのか、またはワイン愛好家の集まりなのか。例えば奥様、もしくはお付き合いしている女性の誕生日なら電話の時点できちんと伝えたほうがいい。

「妻の誕生日なので、静かな席をお願いします」と。この一言でゲストとレストランの距離はぐっと近くなる。

下村氏はメニューを選ぶときにどんどん聞いて欲しいと話す。これはどこのどんな生産者のものなのか、どんな調理法なのか、味は濃いのか薄いのか等など。エディション・コウジ・シモムラでは特に決まりきったメニューがないのが特徴だ。内容によって皿数が変るが、前菜主体でメインは軽め、とか逆に前菜は軽めにして、肉料理のボリュームを増やして欲しい等などゲストの要望、もしくは我侭をできる範囲で受け入れることができるようだ。そう、私たち食べる側はどんどん我侭を言えばいいのだ。(もちろん常識の範囲内でね)



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