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地中海料理の本質を(フードフランス)(2ページ目)

南仏はニースからやってきたミシュラン一つ星シェフ、ヨウニ・トルマネン。シンプルだが奥の深い地中海料理を抱えて初来日です。

嶋 啓祐

執筆者:嶋 啓祐

フレンチガイド

フランス料理
色合いが明るいのも地中海料理の特徴

平凡そうに見える料理には驚くべき感動

ヨウニ・トルマネンの料理は一言でいうとシンプルな地中海料理だ。しかし、シンプルという言葉だけでは語り尽くせないほどアイデアと技術に裏打ちされたもの。

シャンパーニュはアンリオから始まるデジュネ。キリッと身の締まった酸味と軽やかな味わいを持つ歴史あるメゾン、アンリオは私の好きなメゾンの一つだ。そこに登場するアミューズはまさに地中海の香り。トマトとチーズ、バジルをピザに見立てた小さな一口は爽やかさを身体に運び、アンリオは打ち寄せる小さな波のように味わいを洗い流す。

フランス料理
透明なガラス器も楽しい
グリーンピースのブルーテには黒オリーブのピューレが加えられ、シンプルな味わいに微妙なアクセントが添えられる。やや多めにしたためられたオリーブオイルにもシェフのこだわりが感じられる。

面白いのは付けあわせのトーストだ。パンジーの花びらを載せた塩の効いたラードと様々な野菜達がトーストという船の上で音楽でも奏でるような、そんな小さな一皿が添えられる。平凡そうに見える料理には驚くべき感動が仕込まれている。


ワイン
右手のバンドールの方がややこってり系
合わせるワインはもちろんプロヴァンスの白。地の料理には地のワイン。キリリと冷えたさっぱり系の白ワインは薀蓄語ることなくガンガン流し込むに限る。メニューにはロゼもあり、フルーティーな香りと思ったよりしっかりとした味わいを感じることができる。


フランス料理
兎のコンフィと言っても見せ方は現代風
ディナーメニューには兎のコンフィにケッパーの風味をつけてコンポートされた茄子が添えられた一皿が登場する。

これにはソッカという、ひよこ豆のガレットが添えられ、これがまた非常にいいアクセントになり、味覚をぐいぐいと刺激する。ニースの街角ではよく見るつけあわせだ。香辛料がほのかに効き、コンフィ独特の食感に複雑な味わいをもたらしている。

フランス料理
最高の肉質が楽しめる
そしていつもいつも驚くのがスズキの肉質だ。魚はとにかく鮮度とクオリティ。この写真から、口に踏んだときのぷるっとした舌触りが想像できる位、身の厚い、フレッシュなもの。これをニースから持ってきたオリーブオイルを使い、シンプルなソースに、フヌイユとパニスを従える。全く持って無駄のない完成度の高い一皿だ。これが地中海料理の本質なのかも知れない。


フランス料理
アンティチョークってこんなに旨かったか?
こんがりと焼き上げられたアンティチョークが乗ったリゾットも面白い。仔牛のシンプルなジュに、ニースのオリーブオイルでしっかりと風味をつけ、シンプルな料理に深みを与えている。カルナローリ米というイタリアのお米を取り寄せ、粒にしっかりと食感を残し、地中海の風を青山のこの地に運び込む。それにしてもアンティチョークは味の輪郭を焼き加減でうまく引き出されたとても印象に残るもの。簡単そうに見えるが火入れはなかなか難しそうである。
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