フレンチ/東京のレストラン

エクロール(築地)(2ページ目)

すぐ近くの築地市場から届く新鮮な魚介類にしっかりと手を加えた特徴あるレストラン、エクロール。実直な長谷川シェフの確かな技術がいきわたり、美味しさを実感できる料理を求めるファンも多い。

嶋 啓祐

執筆者:嶋 啓祐

フレンチガイド

スモークサーモン
ひと工夫欲しいがサーモン自体は良質なもの

魚介類を中心とした特徴あるメニュー

メニューも魚介類を中心としたコース、そしてアラカルトが並ぶ。肉料理もクラシックなソースを纏う料理が並び、魚だけのフレンチでは決してない。ワインも店の特徴に合わせた白ワインが並ぶが、もう一つ料理との組み合わせを意識したラインナップとリコメンドがあってもいいかも知れない。

前菜のスモークサーモンは凡庸な一皿。かつては高級品だったが、今や家庭でも楽しめるありふれた食材なのでソースや見せ方に大きな工夫が欲しいところ。とは言え、レモンを多めにいただきぐぐっと絞りきると、その爽やかさにほんのりと脂身を感じるサーモンの身が引き締まる。

スープ
魚介類の旨みの本質に迫る一皿か
そのあとのスープは圧巻だった。ホタテをベースにアワビ、アサリ、など様々な貝類を使ったポタージュは海の風、市場の賑わいまでも閉じ込めた一皿だ。丁寧に裏漉しされたポタージュに隠れるように潜むアワビの食感。濃厚ながら飽きの来ない味わいは上品さを漂わせる、風味と味わいと食感のトライアングルとはこのことか。

スープは作るのは非常に手間がかかる料理かも知れないが、食べるほうはとてもわかりやすい。そして、素直に美味しさを実感できるところが安心だ。素材が完全に形を変えて出てくるので、最初に一口まで味の想像がつかないこともある。思い出せばコートドールの夏メニューにある紫蘇のスープもそうだった。口に含んだ瞬間の、これまで味わったことのない驚きを今も忘れない。

メインディッシュ
ソースによってイトヨリが俄然旨みを増す
さて、ゆずのグラニテを挟んでメインはイトヨリのポワレに伊勢海老のソースと共に。肉厚のイトヨリの皮面はこんがりと焼きあがり、伊勢海老のソースが風味を緩やかに醸し出す。白身魚の品質というよりも、じっくりと出汁を抽出し、ソースを仕込み、確実に旨い!と言わしめるストーリーが楽しいではないか。これぞソースの極地。当たり前だがやっぱりフレンチはソースなのだと感じる一皿。

皿から沸き立つ強いインパクトは実は少ない気もする。素材の見せ方は平凡で、その代わり、地に足の着いた確かな技術で素材の形を変えてじんわりと五感にたどり着く。何でも急ぐことが求められる現代にあってゆっくりとじんわりと食という欲求を満たしてくれる長谷川シェフの料理は、私は結構好きかも。ちょっと話しただけの印象だが、この人ならいつ出掛けても誠実な旨い料理を作るに違いないと、直感的に感じたのかも知れない。

脂の乗った魚が出回る冬のこの季節、特にお薦めの一軒だ。

エクロール
東京都中央区築地3-12-12 JKプラザ1F
TEL: 03-3545-6868
営業時間 L:11:30~15:30 (L.O 14:00) 2100円、3150円、4200円
     D:17:30~23:00 (L.O 21:00) 5250円、7350円、10500円
日曜定休
サ10%別


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※メニューや料金などのデータは、取材時または記事公開時点での内容です。

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