フレンチ/東京のレストラン

マノアール・ダスティン(銀座)

多くの有名料理人を輩出する銀座の名店、マノアール・ダスティン。いつ行っても安定したクラシックなフレンチが堪能できる貴重な一軒です。

嶋 啓祐

執筆者:嶋 啓祐

フレンチガイド

マノアールダスティン
外観はあたたかな石造りだ

歴史を刻む料理人

銀座に店を構えてもう随分と月日が経つが、時代の波がどのように押し寄せてこようと、店のスタッフや客層がどう変わろうとマノワールダスティンの料理は決して変わることはないかも知れない。

今やフレンチ界の重鎮とも言える五十嵐安雄シェフ。その薫陶を受けた料理人は数多く第一線で活躍している。ブルギニオンの菊池シェフ、シュマンの小玉シェフ、ラ・グラップの加藤シェフなど、五十嵐門下生を数多く輩出しているが彼らは皆、原宿はアンフォールの出身だ。

その五十嵐氏は独立する前は、かつて一世を風靡した勝ち鬨の倉庫街にあった伝説のレストラン、クラブニュクスの初代料理長であったことは意外と知られていない。クラッシクな技法をベースに前衛的な料理を繰り出す異空間、クラブニュクスは五十嵐シェフの威光で、1990年台前半のフレンチシーンを大きくリードしていたのだ。その意味でフレンチの歴史を刻んできたといっていい料理人の一人。
(クラブニュクスは、現在は銀座に移転)

フランス料理
見た目にもとても美しい
フレンチの歴史を語る上で欠かせない五十嵐シェフであるが、その料理は今ももちろん揺らぐことがない。スペシャリテとして人気のある『人参のムース、ウニとコンソメジュレ』はこれぞフランス料理という手の込んだ一品。素材の持つ本来の美味しさに加え。コンソメと言う手のかかる料理を技術を介して形にした逸品とも言える料理だ。素材を料理に変身させる手品みたいなようなものとも思えるが、決してそうではない。特にコンソメの作り方は地味な作業の積み重ねの上に成り立っている。

簡単に書くと、鶏がらと香味野菜を煮込んで出汁を取り、卵白で濁りを取り除く。そこからさらに牛筋など硬いが味が出る部位と一緒にもう一度香味野菜を煮込み、二段階で出汁を取るといった具合だ。鶏と牛を別々に煮込むことにより、深く濃い味わいを表現することができる。煮込んだ野菜は風味を創出する役割を持つ。ちなみにコンソメの色合いを出すためにはトマトを使うことが一般的だ。通常は2日くらいかけることになる手間隙のかかる作業なのだ。

フランス料理
魚料理の見せ方も手が込んでいる
確かにその料理は門下生達のレストランをはじめとして多くの場所で楽しむことができる料理となったが、当然ながら年季の入った「本家」の味わいはコンソメのジュレの質感において違う。これは永遠に超えることのできない師匠の至高の味とも言うべきものなのか。

むろんその他の料理も同じ。
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