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プライベートダイニング的雰囲気のインテリア |
ワイン不毛地帯である赤坂にちょっと変わったレストランがある。一ツ木通りの一等地にありながら入口が奥まっているせいか場所もちょっとわかりづらい。エレベータで4階に上がると何故かお迎えのドアがそっと開く仕掛けに驚く。店内の席はほどよく区切られ、奥の個室は謎めいた排他的雰囲気が漂う。右手にある高い位置のカウンターはお薦めのポジションだ。上がりきれずに転落する恐れがあるのだが、一旦腰を落ち着けるとそこはなかなかいい眺めが拡がる。左手にあるジャック・ラムロワーズのルセットが入った木箱は手の込んだこだわりの料理というより、素朴で素直に美味しいと感じられる優しい料理を目指すと言う現われか。
98年の開店当初は素人的サービスでありながらそれなりの客層を掴んでいたが、2年前からはよりクオリティの高いワイン、料理、そしてプロフェッショナルなサービスを持つ「レストラン」として今日に至っている。生まれ変わった、と言っていいかも知れない。ワインリストはすべて入れ替えられたのだが、インポータに偏らず、自分の舌で納得できるものが揃ういわゆるストーリーのあるワインリストに変化を遂げた。
ワイン不毛地帯に
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魅力的なワインめがけて著名人も多く訪れる。 |
ここの支配人兼ソムリエである田中孝一氏とは旧知の仲であることをお断りしたうえで、彼のレストランについて書いていきたい。日本ソムリエスクールの専任講師も務める田中氏は大手老舗ホテル内飲食店を皮切りにワイン一筋。フランスのワイナリーも度々訪ね歩き、知識見識はもとより卓越したテースティング能力と接客技術が彼の魅力か。接客技術と書くと堅苦しいが、要はエンターテインメント的で「楽しい」サービスということだ。初めてでも常連でも彼の「ツカミ」に引っかかるとなかなか抜け出せなくなるだろう。ただし、これは訓練されてこうなったというよりもって生まれた田中氏の個性そのままのような気もしないではない。
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新鮮なシーフードに合わせるワインはいかに?! |
スノッブ感溢れる風が流れる雰囲気に酔う前にワインリストを見るとちょっとビビッてしまうかも。7800円のワインと3~40000円のワインが見事に散りばめられているが、値段だけ見ると眩暈がするときもある。その場合はすぐに料理のメニューを見よう。そこにはほっとする料理が並んでいることに気付く。そのあとに再度ワインリストを見てはいけない。すぐに田中氏を呼び、お手ごろなワインを選んでもらいたい。ちょっといいワインを、と言うときは20000円前後でかなり選びがいのある時間を楽しむことができる。いいワイン、すなわち銘柄の持つブランドに捉われず、コンディションが良く、余韻が長く続くワインを揃え、最高の状態でリーデルに注がれる。むろんワインリストに載らないワインもきっとあることだろう。
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できれば白ワインとのマリアージュを楽しんでみたい。 |
九州は霧島高原から取り寄せている黒豚のポワレはロックフォールのチーズのソースと共に濃厚な味わいが表現されている。赤ワインでも構わないが、濃厚なシャルドネとのマリアージュも楽しいだろう。ゆるやかな潮の香りを感じさせる桜鯛のブイヤベース風リゾット添えは人気のメニューらしい。シェフの大川氏はまだ30歳になったばかり。セレブールにはIT業界をはじめとするビジネスの世界で成功した方が多く訪れるのだが、そういった下の肥えた方々を完璧にノックアウトする「味」を日々追い求める日々が続く。
築地にも自ら買出しに出掛け、魚を見る目を正確に養っていると聞く。著名な料理人の下で長く修行したという毛並みやハクがある訳ではないが、日々舌の肥えたゲストと向き合い、屈託のない意見を真摯に受け止める毎日が連続することは料理人にとって間違いなく成長の原動力になる。これからは一品で唸らせるデザートや料理の見せ方に期待したい。
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リゾットを引き立てる上品なブイヤベースは食欲を限りなくそそる一皿だ。 |
もうひとりのサービス担当である小河原氏は某国立大学を卒業後飲食の世界へ。少し前になるが世界ソムリエコンクールで優勝するより難しいと言われる?「笑っていいとも」のイケメンソムリエコンテストで見事優勝した経歴を持つ。そんなネタを披露しつつ日々のサービスにあたる小河原氏は現場でももちろんモテソムリエ。田中氏が「柔」とするなら小川原氏は「剛」か。セレブールはネタに事欠かない実に楽しいサロンなのである。
■セレブール
Tel:03-5545-3775
定休日:日.祝
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