フレンチ/東京のレストラン

限りなく創造的な料理は「和風」を遥かに超えて ラ・ココット(鶴見)(2ページ目)

「西洋懐石」という言葉に想いを込めた佐山シェフのクリエーティブ・キュイジーヌ。さあ、暑い夏を静める涼しいフレンチに会いに行こう!

嶋 啓祐

執筆者:嶋 啓祐

フレンチガイド

クリエーティブな料理に言葉が出ない


ラ・ココット前菜
優しい味わいに気持ちも涼しく
夏野菜とホタテを使った前菜のやさしさにゆっくりと気持ちが落ち着いていく。それぞれの野菜の持つ食感と味わいの組み合わせは虹のように渦を巻く
ウニのジュレのほんのりとした磯の香りに夏の北海道を思い出す。まったりしているようでするりと体に入り込み気持ちのいい後味がしっかり舌に刻まれる
シャンパーニュで余韻を流すのすらためらわれる。

スープ
当たり前のスープがとんでもなく旨い
料理人の手を介して極限まで高められた、とうもろこしのスープ。普通のスープが普通に作られたものではないことが、あっという間に底が見えてきたときに初めてわかるのだ。そして、すぐ隣の庭で採れたかのようなハーブ野菜。自然の恵みと香りが一つ一つの皿にさり気なく載せられ、驚きの連句技に創造性という言葉さえ、軽すぎて忘れてしまうほど

メインディッシュ
さまざまな食感に驚きの連続
そうか、料理に驚きは必要だ。見た目の驚き、そして口に含んで味を噛み締めたときの驚き。こういった経験によって、素材と素材の絡み合いとか、ソースと素材の相性とか、様々な味覚が養われることになるのではないか。そしてそれはフレンチならではの楽しみではなかろうか。料理を見るからに和風フレンチだと言えばそれまでだが、皿や見せ方が日本的であるだけで、技術は明らかにフレンチスタイルだ。

しかし、デザートの前のお蕎麦だけは典型的な日本食。それが不思議なほどこのコースメニューに必要不可欠に思えたのは何故だろうか。絶妙のタイミングに驚き、それを受け入れる自分にも驚く。しかし食べることで、驚いたりほっとしたり、気持ちが昂ぶったり落ち着いたり、そんな感情の起伏も楽しめたら言うことなしだろう。

唯一の不満は、記憶に刻まれるであろう料理の数々に対し、それを引き立てるワインリストがないのはいささか寂しい。シャンパーニュやロワールやアルザスのワイン、軽めのブルゴーニュワインを数種類置くだけで随分と料理の味わいや楽しみも変わるような気がしたが、これはマダムもしっかり認識しているはず。

シェフの想い


ドライアイスの中から現れるデザートは!?
佐山シェフはこう語っている。
「西洋懐石と、あまり聞き慣れない言葉を使うのには理由があります。それは、フレンチのエスプリと和食の繊細さを融合させた新しい世界を探求し続ける拘りなのです。何処にも無いオリジナリティーを創り続けていきます。」

どこにもないオリジナリティという言葉に隠されたシェフの意気込み。最近の料理人でここまで言い切れる人は何人いるだろうか。フランスの三ツ星シェフはマスコミやメディアからのものすごいプレッシャーを受けながら、日々新しい料理技術と格闘していると聞く。

素材は出尽くしてしまった感がある。これからは技術に帰る時なのだろうか。
3800円コースの平凡で万人受けする料理を否定はしないが、私はレストラン、特に30代の若い料理人が営むレストランには何か一つでも自分だけのオリジナルを求めたい。

カウンター席もある。次回の食事はここがいい。シェフが実際に動いているところを観ることは刺激的だ。しかしながらどんなに創造性溢れる料理を作ろうとも、いつもにこやかなマダムの笑顔には勝てない。美味しい料理はサービスする方の笑顔があって初めてその何倍も美味しくなるのだから。

ラ・ココット
横浜市鶴見区諏訪坂18-23
予約専用番号:045-574-2100
ランチ 11:30~14:30
ディナー17:00~22:00
※クレジットカードの取扱いはない。
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※メニューや料金などのデータは、取材時または記事公開時点での内容です。

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