小さなレストランだ。数えると14席ほど。その小さな空間を笑顔のマダムが風のように舞う。10人ほどの入りでも決して滞ることがない。水のお代わりが欲しいなと思ったら、すーっと。ワインサービスも自然に。まるで魔法使いのよう。

僕は余りに気分がよくなり、料理の細かな名前を記憶することをすっかり忘れてしまった。ワインすら忘れてしまった。しかし、食したものはここに並べる写真の通りである。実に繊細で、優しい料理である。それでいて、トータルではボリューム感もしっかり。パンもふわっとして、もちっとして、+525円でエシュレの無塩バターも用意される。これはぜひオーダーしたいところだ。


デザートも出来合いのケーキとアイスといった組み合わせではなく、しっかりと創作するサプライズ感溢れるデザート。ガレットの上に乗った蜂蜜のアイスは、必ず堪能すべき究極の味わいだろうか。その後のプティフールやエスプレッソまでもちろん手抜きはない。手抜きどころか、ハーブティーはポットで、エスプレッソはお代わりも用意される。

私はこのレストランをまるごと持って帰りたくなったくらいだ。

オーナーシェフの増田稔明氏はポワローで三年半料理長を務めていた方。「フランス料理情報サービス」のサイトにあるシェフの一言にはこう書かれている。

「まずメニューを読んでどんな料理か想像してもらい、実際サービスされた皿によってそれをどれだけ驚きや喜びに変えられるか、いい意味でゲストの期待を裏切っていきたいです」と語る増田シェフが料理を作る上で一番大切にしているのは見た目と食感。これはかつての修業先、「ジャルダン・デ・サンス」で学んだことだ。

気がつくと外は雨が降っていた。私はもっともっとこのレストランを知りたくなっていた。メニューを全部味わいたくなる気を抑えることができない。それはお腹一杯になってからもそうなのだ。そんなことを考えているうちに、チップを置くことを忘れてしまった。まったくもって情けない限りである。

夜のコースの値段は3780円と5250円。サービス料はない。

【2015年閉店】
ル・デッサン
●新宿区原町2-6-7 ハイツエムエス1F
●営業時間 12:00~14:00(L・O)18:00~21:30(L・O)
水曜・第3火曜定休
●席数 12席
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