レストランは何も男が女を誘うための道具ではありません。とは言いながら男同士で体裁を気にせずガツガツ食べたくなる時に、さあ何処行こうかと悩むことが結構あるものです。お洒落なイタリアンでは場違いかなと思い、ましてやフレンチとなると、「おいおい、そんなとこあったっけ?」となることもあるでは。
第一回目は大人の食べ歩きガイドの伊藤さんが選んだテラウチ。こだわりが感じられるガツン系のイタリアンでした。
さて第二回目はフレンチ。といってもかしこまったところではなくあくまで普段着感覚で訪れるべき「ビストロ」。進化しているようでしていない、でも何年経っても変わらないフレンチの日常をしっかり伝える「定食屋」と言ったほうがふさわしいかも知れません。
例えば学生時代や以前の会社の友人や仕事仲間といった面子でガツン!と食うぞ、という時に真っ先に浮かぶのはここ、「ル・デパール」です。開店が1989年というからもう15年近くになります。不安定な景気の中15年も流行り続けているのは賞賛に値すると言っていいのかも知れません。
小田急線と千代田線の代々木上原駅に程近い「ル・デパール」は深夜までオーダーを受け付ける頼もしいビストロ。事実、22時以降に混みだすあたりはまさにフレンチエスプリティックかも。そもそも代々木上原自体、夜が遅い街。チェーン店や派手な外観の店もなく、落ち着いた街でもあります。これまでのガイド記事の中でも何件か取り上げていますが、全体的にレベルは安定していると言えるでしょう。
このビストロを一言で言うならば「雑然さ」かも知れません。木作りのドアを開けるとその先には食欲をそそる香り。グラスやボトルに混じってハンガーコートや雑貨が並んでいますが、あくまで品のいい雑然さ。店内の明るさもほど良い暗さ。すべて長い時間をかけて熟成した日常そのままであることにすぐに気付くでしょう。。
15年を経た時間がしっかり息づいています。
テーブル席も遅い時間にはしっかり埋まり、まるでサンジェルマン・デ・プレの名店ラ・マリー・ヴェルデにそっくり。中にいる人が日本人なだけで雰囲気はまるでフランスの日常風景を上手に切り取った映画の如く。特にカウンターでは構われることもなく、構えることもなく、ここではその雰囲気の中で悠々としていたいものです。薄暗くウッディな空間は、しばしの時間と共に最上の寛ぎに変わります。場所柄か著名人も多いのですが、目立つことなくひっそりと薄暗い空間に溶け込んでいます。
料理はボリューム感と噛み応えある味わいにおいて食いしん坊の欲望をしっかり満たすものです。繊細な盛り付けや手のかけすぎたものである必要はありません。必要最低限欲しいのは、ただただボリュームとがっしりとした食感。ほっとした優しい味わいの温野菜の一皿はふーふー言いながらフォークでグサリグサリ。塩加減もちょうど良く寒い冬には冷えた体をほんのりと温めてくれます。
さあ、まだまだ料理は続きます。。。