中野。以前勤めていた会社が東銀座からこの地に移転したのが1988年だったと記憶している。
新入社員時代は銀座、転職して東銀座、やっぱり都会はいいなあ、と実感していた20代前半はとても懐かしいものだ。
ところが会社は中野に移転。慶応幼稚舎上がりの上司など、「まるで都落ちダ」と叫んでいたことを思い出す。そんな中野だが住めば都。
安くて粋な寿司屋、品の良いてんぷら屋などなど、狭い地域に密集する飲食店街はDeepでかつ楽しい世界があった。
そんな中野生活に慣れ始めた頃、一軒のビストロがオープンした。飲み屋街とは離れた新井の住宅街の中に現れたビストロ・クスクス。
若いご夫婦二人で切り盛りする小さなビストロ、いや洋食屋さんといったほうがいいかも知れない。
ガイド記事として紹介するには、これまでちょっとどうかな?とも思ったが、私はこのレストランが大好きなので、誰が何と言おうとここは本腰を入れてちゃんと書こう。
この写真を見て欲しい。多彩なメニューに驚かされる。量や組み合わせも変えることができる等、とてもわかりやすく、やさしいメニューになっている。そもそも見ていて飽きない。
その日のお勧めが黒板にたくさん書かれているが、マダムの実家である房総は勝山からの新鮮な魚に真っ先に目を引かれる。鯵のカルパッチョ仕立てなど、新鮮さに加えほっとする爽やかな味わいだ。
これからの季節は牡蠣がうまい。宮城産の大ぶりの生牡蠣は1個200円。2個で十分なボリュームだ。ミルキーな味わいもまずまず。シャンパーニュなどあれば最高どころか天国に違いない。
パン粉を塗したポークソテーには野菜がたっぷり。隠し味に味噌を使っているが、これは工夫が空回り。そのままでも十分うまい。コンソメスープ、エスカルゴ、鴨のソテー、ラムチョップなど、なんでもあるぞ。
魚のラインナップもしっかり。スズキのほかエイヒレのソテーなどもボリュームたっぷり&ダイナミックな味わいだ。
サラダも房総の顔の見える農家から仕入れており、このクラスの小さなレストランにしてみると細やかなこだわりが垣間見える。
仕込みも丁寧に、しかもてきぱきとこなしていかなくてはこれだけのメニューを維持していくことは難しいだろう。
中野を離れてからも何度か食事に出かけているのは、変わらずに惹きつけられる魅力があるからか。
店内は雑然としており、席も狭い。しかしご年配の男性やご近所のカップル、近隣の会社員など客層も多彩。サラリーマンもネクタイ緩めてみんな下駄履き感覚でやって来る。雑然さと多彩さがいい空気を醸成しているのか。
こんなレストラン、ブルゴーニュやコートダジュールにはたくさんあったことを思い出した。初めて来た人にもマダムは屈託のない笑顔で「はい、こっちの席のどうぞ、はい、メニューね、今日のお勧めはねっ!・・・」とハイテンションで攻めてくる。
ここまで来ると申し上げるまでもないが、値段も下駄履き感覚。2000円程度のワインを飲んで料理をあれもこれもとたらふく食べて2人で6000円もあれば十分。いや、きっとお釣りがくるだろう。
コース料理を見てみよう。
まんぷくコース・・・1500円
とくとくコース・・・2000円
イケイケコース・・・2500円
まんぞくコース・・・3000円
ビストロはこうじゃなくっちゃいけない。
ちなみに私はこの記事に載せた写真の料理をすべて食べて2500円(飲物別)。
さて、中野はこの2年の間に随分店が変わったようだ。クスクスにとっては競合店が増えたと聞く。追い討ちをかけるように、協力会社まで含めると1000人近い社員を擁していた近所の会社が来年5月に移転するという。
しかし浅沼シェフ、気にすることない。
もう少し広いエリアにビストロ・クスクスを広めればいいのです。一度来られたお客様はきっと常連客になる。
さて、次回は何食べようかと、今から食欲が高まる私のサブダイニング。
周りの目を気にしないでガツガツと食事に浸れるこの快楽。特にこれからの季節はたまらない。
■ビストロ・クスクス
住所:中野区新井2-27-6(中野駅北口より徒歩10分)
中野駅北口の中野通りサンプラザ側を早稲田通りに向かう。早稲田通りと交差するフレッシュネスバーガーを左折。その先のセブンイレブンの手前を右折して徒歩2分歩いた右手。駅から徒歩10分位
電話:3319-3022
ランチ 11:30~14:00ごろ
ディナー17:00~22:00
無休ですので、毎日開いています!
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※メニューや料金などのデータは、取材時または記事公開時点での内容です。