04年5月にランチ、6月にディナーに再び出掛けたが、繊細な味わいにますます拍車がかかり、料理のレベルは間違いなく上がってきた。もともと実力あるシェフなので、そう驚くことではないが、なんとなく嬉しい。
ただしサービスはもっと客の中に入ってきていいし、シェフももっとアピールすべき。料理は進化の道をひた走るが、それ以外のレストランの構成要素をもっと充実させることを願ってやまない。
いずれにせよ、これからの季節、素直に料理に感動したいときに自信を持ってお薦めできるレストランだ。2004/06/9
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このところフレンチを食べてちょっとがっかりすることが多かった。銀座の名店では凡庸な料理と平凡なサービスに悲しくなり、街場のビストロでは迫力のない料理と地味なサービスで元気が奪われたりした。フレンチの楽しさを感じたいのに、感じられないこの気持ち、実は非常に辛かったりする。
そんな悶々とした時にタイミングよく、年に2度必ず一緒にフレンチに出かける大切な友人からお誘いを受けた。朝の某人気番組に長く出演している方だが、フレンチをこよなく愛する尊敬すべき人。
彼女と久しぶりの会食に選んだのはシェ・ウラノだ。「和の手法を取り入れた、決め細やかな味わいのフランス料理。」女性誌のコピーならこのように表現するであろうフレンチがこの夏、東京タワーの麓に誕生していた。
神谷町といえば古くは城山ヒルズ、ここ最近では愛宕グリーンヒルズ周辺が新しく開発され、近代的な街並みができつつある。だいたいにおいて、夜景が綺麗なレストランにはお味の方は期待できないことが多いので、こうした人気スポットの周辺部に実力あるレストランができたことは個人的にも非常に嬉しい。
神谷町駅の東京タワー側の出口から出て、ほんの数分だろうか、坂の途中に緩やかな光を零すレストランをすぐに見つけられるだろう。ドアを開けたその先には真新しい香りが隆漂う。それはできて間もないという新鮮な香りに加え、料理人浦野健次郎氏の粛々とした意気込みを感じさせる香りだ。
前者をエアーとするなら後者はフレーバー。初めてのレストランは入ったときに感じる香りは、その後の印象を大きく形作るものだ。それは経験上ほとんど外すことはない。採用面接と一緒で初対面が重要でかつ、すべてと言ってもいいかも知れない。
白を基調とした店内では正面の厨房をガラス越しに見ることができる。小さいながらゆとりを感じる空間に仕上がっている。
いつもはメニューを見ながら、あれはこれはと想像を掻き立てるがここはとてもそっけない。コースの3種類のみで我々は8000円のコースを選択。最近にしては珍しく料理が選べない。しかし、コース毎に書かれている表現は十分に想像力と食欲を掻き立てるものだ。