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任天堂をIT企業として考えてみる(2ページ目)

任天堂はIT企業でしょうか? 普通に考えたら、玩具メーカーであってIT企業ではありません。しかし、任天堂が世の中に創出しているコンテンツには、非常にIT的なアプローチのものがたくさんあるのです。

田下 広夢

執筆者:田下 広夢

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偶然のコミュニケーションを作り出すnintendogs

nintendogsの図
すれちがい通信に初めて成功した時には、ちょっとした感動がありました。しかしこれは、nintendogsがヒットしたからこそ成立した通信方法ですね。
ゲームの中で犬を飼うことが出来るゲーム、ニンテンドーDS(以下DS)のnintendogsは、非常に実験的で面白いコミュニケーションの形を提案したゲームです。nintendogsは、毎日ゲームの中で飼っている犬にエサをあげ、散歩をして、芸を教えたりアクセサリーをつけたりして遊びます。ポケモンと同じように、そういったプレイングを通して、ただのデータではなく、自分だけのペットのような親しみがわいていきます。

そして、やはりポケモンと同じようにそのデータを通信でやり取りしてコミュニケーションを生むわけですが、その方法がとても面白いのです。すれちがい通信と呼ばれる方法で、nintendogsのソフトを起動したDSをスリープ状態で持ち歩くと、同じ状態で持ち歩いている人とすれ違った時に勝手にデータのやり取りをするというものです。

nintendogsで初めて使われたこの通信方法は、今では、おいでよ! どうぶつの森や、ゼルダの伝説 夢幻の砂時計など、様々なソフトに採用されているのでご存知の方も多いかと思います。この通信の特異な点は、通信した事実そのものに価値があるということです。本来オンラインを使えば誰とでも通信できるはずですが、そこをあえて実際にすれ違った人とだけ通信する仕様にすることで、通信に成功したユーザーにはささやかな一体感が生まれます。nintendogsは通信を通して、出会えた! という価値を生み出すことに成功しているわけです。

健康を入力してもらうことに成功したWiiFit

WiiFitの図
健康という情報は家族内のコミュニケーションツールとして利用するには、最高のコンテンツだったかもしれません。
ITのサービスは、情報を検索したり、加工したりすることで価値を生むものも多いですが、そもそも何の情報を入力するかというのも重要なポイントです。例えばmixiは個人的な情報やブログなどを入力します、はてなブックマークは自分の気に入ったWebサイトをブックマークすることで入力します。そういう視点でみると、WiiFitという商品は、とても変な言い方ですが健康管理を入力してると言えます。

WiiFitでは、毎日体重を入力します、それにバランス年齢の測定の結果やBMI値、さらには毎日の運動の成果も運動貯金という形で入力されます。それぞれはカレンダーや棒グラフといった形で記録され、家族同士で比較することができます。体重であるとか、バランス感覚といった、極めてパーソナルで、身体性がありアナログな情報を毎日計測しながら入力してもらうというのは、そう簡単にできることではありません。しかしだからこそ入力、蓄積できれば非常に価値の高い情報であり、コミュニケーションを生みます。

普通に考えたら入力機器つきで8800円もする商品を買ってもらって体重を量り、その情報をコンテンツにするというのは、かなり無理があります。25,000円の本体が必要となればなおさらです。しかし、WiiFitはゲームという切り口でその壁をいともたやすく飛び越えて既に180万本以上も売り上げています。WiiFitはゲームとしては異端の存在ですが、しかしゲームコンテンツだからこそ成功したとも言える商品です。

最後に、ゲームとITの関係について考えてみたいと思います。
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