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映画『ピンポン』の試写を見て(2ページ目)

卓球を題材にした松本大洋さんの原作『ピンポン』が、この夏、映画として公開されます。ひと足早く、その試写を見てきました。

執筆者:壁谷 卓

《映像の現場にいる人たちは、原作を勝手にいじくり回して、物語を骨抜きにしてしまうことが多い。特に小説の場合に、その傾向が著しい気がする。原作の小説と映像化された作品を比べて、映像のほうがよかった、との感想を聞くケースがどれだけあるだろうか? もちろん、文章で表現されたものを、安易に映像として置き換えたところで、いい作品にはならない。ところが、まずたいていの映像化では、勝手に話の核心にまで手を入れ、わけの分からない代物に変えてしまうのだ》

つまり、原作と映像というのは似て異なるものであり、映像化に際してまったくの別物に改変されるケースすらあるが、その大半は原作を上回ることがない、ということです。溜飲を下げた気がしました。私もまた同じような煩悶を抱えていたからです。

原作を読む。映画化されたものを見に行く。ガックリと肩を落として映画館を後にする。原作がお気に入りであればあるほど、肩はいっそう「なで肩」になる。そんなことが何度かあったためか、知らず知らずのうちに映画から疎遠になっていたのです。

だから、『ピンポン』は見に行こうかな、という気になったのです。原作者の松本大洋さんには恐縮なのですが、私は、週刊漫画誌に連載されていた『ピンポン』を途中から読むのをやめてしまった経験の持ち主です。理由は簡単。漫画誌そのものの購読をやめてしまったからです。漫画誌を読まなくなったのは……忘れるぐらいですから、たいした理由はなかったのでしょう。

それはさておき、原作に「挫折」したのは事実です。少なくとも、追いかけようと思うほど強く吸い寄せられなかったのは確かです。であれば、すなわち原作がいくら高い評価を受けていようとも、その素晴らしさを感じとることができなかったのであれば、映画を見ても肩を落とすことはありません。おまけに、スクリーンに映し出される『ピンポン』は、ひょっとすると「別物」に生まれ変わっている可能性もあるのです。

私は、東京・五反田にある試写室に足を運びました。
そのあと、原作を単行本で買いそろえ、貪るように通読しました。
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