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映画『ピンポン』の試写を見て(6ページ目)

卓球を題材にした松本大洋さんの原作『ピンポン』が、この夏、映画として公開されます。ひと足早く、その試写を見てきました。

執筆者:壁谷 卓

原作では、チームメートのもとに戻った風間が、佐久間から「誰のために打つのか」と問われたことを伝えます。「ほれでなんと?」というチームメートに、佐久間に対するものとは違う答えを口にするのですが、映画ではその部分がさりげなくカットされています。そして、見ている私たちに想像を委ねながら、星野と対戦した風間が自分の本心を「発見」するというクライマックスに突入してゆくのです。

原作と映画、どちらがいいかの判断は微妙ですが、原作に漂っていた思惟的、洞察的な薫りをほのかに弱める「小さな改変」が全編にわたって施されているため、映画『ピンポン』は嗅覚的、想像的な側面が匂い立つ作品に仕上がったように思います。

資料には、曽利文彦監督について《デジタル映像に関して、世界でもトップクラスの知識と力量を持つ監督》とあり、その手腕は卓球のラリー戦のシーンにも存分に発揮されています。

特に、星野を演じる窪塚洋介さんが、卓球場のオババに扮する夏木マリさんと行う「多球練習」のシーンは、本当に本人たちが打っているのではないか、と思わされました。この映画のタイトルが、なぜ世界最強の国の漢字に置き換えられなかったのか、と惜しまれるほどです。

《世界が待ち望んでいる青春映画のニュー・バイブル》ともあります。確かに青春映画であることは間違いないのですが、それと同時に、「青春回顧映画」の側面も持ち合わせているのではないかと思えました。スクリーンに映し出されるひとコマ、ひとコマがなぜかセピア色に感じられ、甘酸っぱい懐かしさのような感傷が沸いてきたからです。

映画『ピンポン』はこの夏、全国の映画館で公開されます。私は再び、のこのこと出かけていくのではないかという気がしています。

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