魔女の棲むゴルフコース、オーガスタ
13番ホール「Azalea」。池ポチャもあればイーグルもあり、例年優勝争いの鍵となるエキサイティングなホール。 |
ドローボールとは、ご存知のとおり落ち際から左に曲がる弾道。つまり左ドッグレッグ(左に曲がっているホール)が圧倒的に多いため、左に曲がるボールをホールが要求しているといわれます。2番、5番、8番、9番、10番、13番、14番がなんと左ドッグレッグ。特に距離のある10番ホール「Camellia」では、ドローボールを打てば落下地点付近のダウンヒルに乗り大きく飛距離を稼ぐことが出来ますが、右に行くと距離が稼げず、大変難しいセカンドショットが残ります。
13番ホール「Azalea」でも前述のようにイーグルを狙うのであれば、ティショットにどうしてもコースなりのドローボールを打って、セカンドショットの残り距離を短くしたいところです。
フェードボール(落ち際で右に曲がる弾道)を持ち球としていた名手、リー・トレビノは「(ドローヒッター有利な)オーガスタで開催する限りマスターズには勝てない」と物議を醸しました。トレビノは、全米オープン、全英オープン、全米プロをそれぞれ2勝しメジャー通算6勝を誇る超トッププロ。マスターズを制するとグランドスラム達成だったこともあり、思わず文句を言いたくなる気持ちもわからないでもありません。
優勝の決まる最終18番ホールは、なんと右ドッグレッグ。最後の最後で逆球のフェードボールが要求されるというしびれるコース設定となったのですが、近年の大規模なコース改修で大幅に距離が伸び、フェードボールの必要性は以前より薄れました。
91年のマスターズでは、優勝したイアン・ウーズナムはプレッシャーのかかった状況でフェードボールを打つことを選択せず、ドライバーで左方向のバンカーの先、隣のホール辺りまで飛ばしてパーを拾い優勝を手にするという離れ業を見せました。残念ながら、距離が大幅に伸びた現在はこの作戦を使うのは難しいでしょう。
“ガラスのグリーン”の難しさはもちろん、強風やコース自体の難しさ、パトロンと呼ばれる大観衆による独特の雰囲気、毎年ドラマチックな出来事の起こるオーガスタナショナルGCには“魔女が棲む”と言われています。オーガスタの魔女に愛されたものだけが、優勝者に与えられるグリーンジャケットを手にすることが出来るのです。
昨今のゴルフギアの進化に伴い、オーガスタナショナルGCでは、2002年から大規模なコース改修が行われ、コース全長が大幅に伸び、ラフが出来るなどさらに難易度が上げたセッティングとなりました。昨年優勝したザック・ジョンソンの優勝スコアは、+1となんとオーバーパー。トッププロたちが難コースを舞台にしのぎを削る、それがマスターズの最大の魅力です。