ついに“ストップ・ザ・引き抜き”に乗り出したボクシング界

ボクシング界からの越境者。鈴木悟と大東旭。“元”チャンピオン二人のMAXデビューが引き起こした波紋は限り無く大きい。
ボクシング界からの越境者。鈴木悟と大東旭。“元”チャンピオン二人のMAXデビューが引き起こした波紋は限り無く大きい。
これまでもK-1やPRIDEなどの新興格闘技イベントが、レスリングや柔道界など他の競技で一家を成したスター選手を引き抜く行為に関しては、このAll Aboutのコラムでも様々な角度から警鐘を鳴らして来たつもりだが、エスカレートする一方の「スター獲得主義」は一向に止む気配がない。

ついに“被害者サイド”にあたるボクシング界からは、明快な拒否反応が突きつけられる事になってしまった。「K-1、PRIDEのリングに上がったボクサーには、ボクシング界復帰を認めない」。今月(11月)14日に、西日本ボクシング協会から、そんな強い調子の通達が出されたのである。

この声明は、同協会の>HPにも掲載さされたため、近年格闘技に誌面を大きく割くようになった夕刊系のスポーツ紙でも大きく扱われ、中には東京スポーツのようにトップ記事としてセンセーショナルに扱うものもあった。

具体的な内容は以下の通りである。

「K-1出れば復帰させず 西日本ボクシング協会」
 西日本ボクシング協会(辻本章次会長)は14日、同協会に所属した元ボクサーがK-1や総合格闘技に出場した場合、ジム運営やトレーナー、マネジャーなどでボクシング界復帰を認めないとする流出防止策を発表した。日本ボクシング協会傘下のほかの協会にも同調するように働き掛けていく。今月12日の理事会で決定した。12月1日から適用する。
 (1)ダメージを負って引退した選手の健康管理
(2)総合格闘技系からの引き抜き防止
(3)元ボクサーが慣れない総合格闘技系で敗れることによるイメージ低下阻止-を図る。
 引退した元日本チャンピオン2人(1人は元西日本協会所属)が10月にK-1に転向して、いずれもKO負けを喫したことも流出防止策を設ける要因となった。


西日本ボクシング協会は、近畿四国地域の60近い加盟ジムを統括する組織で、日本ボクシング協会内でも、東日本に次ぐ規模を持つ組織となっている。

これまでにも、西日本ボクシング協会は、非加盟ジムで育成した選手を表面上加盟ジム所属選手としてプロ興行に参戦させる、“名義貸し”に対し100万円の罰金と一年間のプロ資格停止という措置を打ち出すなど、半ば業界の慣例となってしまっている悪習に対して、正面から対抗措置をとってきた事でも知られる。

措置が発表されて半月、規制が発動するのは12月と言う事もあり、まだ表立った反応は見えて来ていないが、現在興行面で地盤沈下が言われて久しいボクシング界にとって、プロレスの地盤を引き継ぐ形でめきめき興行力を付け、今やテレビや雑誌などのメディアではしばしばボクシング以上の訴求力を発揮する“新興格闘技”に対する危機意識は相当の物ではないかと想像される。

まして、垣根を隔てた“別エリア”として話題性/興行力だけを争うならともかく、グリーンボーイから手塩にかけて養成し、ようやく知名度が上がって来た選手を引き抜かれる。さらにその選手たちはルール違いの競技の中で「敗者」のレッテルを貼られてお払い箱。言ってみればジャンルとしてのボクシング全体が冒涜されていると言っても過言ではない。そんな暴挙をいつまでも看過するわけにはいくまい。

早速、西日本ボクシング協会会長を務める辻本章次会長に、この通達の真意についてコメントを頂いたので、これを基に“新興格闘技”サイドからの妥当性の検証と今後の推移について考えてみた。