【特集:HERO'S徹底分析】
(1)過去編前田&K-1合従連衡の背景
(2)現在(大会総括論)編英雄は一夜にしてならず
(3)未来(選手発掘)編新RINGSネットワーク復興を占う


「戦国時代に豊臣秀吉が墨俣の一夜城を作ったのに似ている。皆さんの協力無くしてはできなかった。選手たちもよほどの勇気と闘志が無ければ短い準備期間で試合を受けることはできなかったと思う」


前田日明
“一夜城”の故事を引いたのは、天下取りに自信ありのサインか? 蘊蓄に満ちた語り口“前田節”健在
新総合格闘技イベントとして、突如ファンの前に浮上した「Hero's」。その前日会見で、前田日明はいみじくも、この大会の性質を“一夜城”と看破した。

旗揚げ発表からたった三週間の突貫工事。
本来ならどんなイベントも発進不可能な構造だ。しかし、それはそれは成し遂げられた。主催者発表1万2754人。実際に会場に脚を運んで見た実感でも、セットバックで二階席が潰れた分を差し引いても、八割の客席は埋まっており、“前田復活”に寄せられたファンの注目度の高さを伺わせた。

主催した「ビッグマウス」代表取締役の上井文彦氏は、「奇跡の大会でした。若いお客さんが集まってくれて、感激しました。プロレスの常識ではあり得ない」と興奮気味に語っていたが、決してこれは奇跡ではない。

「一夜城」は確かに建った。
だが、壮麗に開催された「前田城」の幻影の下部には、昨年末からK-1と慧舟会という強力なタッグが準備を進めていた「新ROMANEX」とも言うべき “基礎工事”が、年末の「Dynamite!!」と平行して準備され、進行していたのだ。

K-1とビッグマウス、慧舟会のジョイントベンチャー

実はこの大会の前に“「HERO's」幻の第0会大会”というべき企画があった事を知る人は少ない。

以前、このページの昨年12.31に掲載した「恒例・井田&矢作狂犬ブラザース年末格闘技大放談2004~格闘ブーム裏事情メッタ切り」で示唆した、2.7代々木第一体育館「和術慧舟会&K-1合同の総合格闘技興行」開催の動きだ。

僕は、この大会に実際に参戦を打診された選手や、K-1に近い筋からの興行情報でこの動きを察知しており、低迷が続いていたK-1MMA路線の切り札になり得る興行として紹介していたのである。

ただ、興行ラッシュで、お互いに反目の種が増えた今の格闘技界の政治地図を考えると、これはあまりに大胆すぎる指摘だったかもしれない。掲載から3日としないうちに、慧舟会側から抗議を受け、結局、僕はこの記事の当該箇所を、削除扱いにせざるを得なかった。

というのも、慧舟会は、PRIDE、パンクラス、DEEPなど各団体に選手を派遣「全方位外交」を基本としており、現在も加熱の一途である団体同士のライバル関係には一番神経質にならねばならない立場だからだ。水面下でのそうした動きを記事にされる事で、関係各団体の神経を刺激する事は避けたかったであろう。そして、なにより記事の中で“K-1傘下に入る“といった事実に即さない表現をしてしまった事は、「どんな権力にもおもねらず、対等外交」を貫いて来た、慧舟会の久保豊喜代表の神経を逆撫でする形となってしまったのである。

既に2月代々木大会開催の見送りが決まっていた事もあり、記事は自主的に削除処分としたが、この“幻のスクープ”が後の 「HERO'S」開催につながって行く動きであったことは間違えない。