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5.2K-1MAX開幕戦。隠された負傷の秘密を語る 魔裟斗、苦悩の心境を告白

5.2K-1MAX開幕戦、楽勝と見られていたイム戦を判定で切り抜けた魔裟斗。実は右足靭帯損傷という重大な怪我を押しての出撃だった。試合終了後のインタビューを全掲載。

執筆者:井田 英登

突如、明かされた「真相』

魔裟斗
当初、まったく「おとぼけ」のまま記者会見を乗り切ろうとした魔裟斗だったが…
5月2日K-1World MAX開幕戦、年末の「DYNAMAITE!!」以来久しぶりのリングに立った魔裟斗は、この日、韓国人選手イム・チビンの意外なまでの粘り腰ファイトに、決定的な局面を作り出せないまま最終ラウンドのゴングを聞いた。

本来こうした膠着戦を演じた時の魔裟斗の自己評価は低い。

彼自身の想定するハードルの高さ故だろうが、他人にも辛辣な分、自分自身の戦いにも厳しい視線を投げかける。それが、魔裟斗と言う選手をここまでのポジションに押し上げてきた要因でもあると、僕は考えてきた。

だが、試合後の会見は、意外にも「完勝というより、まあ、楽勝でしたね」という強気なコメントから始まった。らしいといえばらしい、突っ張り発言だが、多少違和感が残らないでもない。

だが、そんな魔裟斗の言葉を遮るように、会見場の横に立った新日本キック・伊原会長が声を張り上げた。

「魔裟斗、言った方がいいよ。28日。ほら、公開スパーの時、脚の裏の靭帯伸ばして、筋肉切ったことをさ、なあ」

なんと、魔裟斗は今日のリングに手負いの状態で上がっていたと言うのだ。
一瞬、怪我という衝撃的な事実の暴露に記者陣にも緊張が走ったが、伊原会長の野放図なしゃべりっぷりのユーモラスさに、最後は笑い声までがあがる。

途端に悪戯を発見された子供のような、バツの悪そうな苦笑いが魔裟斗の顔に浮かぶ。

魔裟斗「えーと(笑)風邪を引いてケビンさんの所の…六本木のK-1のジムのオープニングイベントに行けなかったのは、ホントは風邪じゃなくて練習中にちょっと靭帯伸ばしちゃって。本当は試合やめようかなとちょっと思ったんですけど、どうしよーかなーと。練習でも左足蹴れない状態だったし」

伊原会長「次の日歩けなかったもんな。病院行って、ずーっといたな。1軒、2軒…3軒行ったのか? MRAっていうの? あれが撮れなくて。なあ、車の中で悩んだよなぁ」

魔裟斗「悩みましたね(苦笑)。左の蹴りは昨日シャドーで初めて軽くやって、『あ、行けそうだな』って。今日、ちょっと出してみましたけど。28日の公開スパーの時も左蹴らなかったじゃないですか。その前まで右足も蹴らなかったです。背伸びの状態になって、(軸足の)つま先を上げる状態が上がらなくて、今回どうしようかなって」

伊原会長「でも、魔裟斗は絶対に「やめる」って言わなかったね。オレがあんまり言うのもおかしいけど。あとは自分の口から言って。これだけいい試合したんだから。普通だったら、試合はストップだね」

魔裟斗「そうですね。医者はやめた方がいいって言ってましたね(笑)」

伊原会長「ま、後はみんな褒めてやって。じゃ、オレは先に帰るぞ」

魔裟斗「はい、ありがとうございます(笑)…そういうことでした(苦笑)」


魔裟斗としては、怪我自体秘密にしたいという美意識があったはず。本来苦しくて仕方が無かった試合を「楽勝」の一言で切り上げて、さらっと次の本戦トーナメントへ話題を持って行きたかったのかもしれない。

だが、人情家で売る伊原会長の暴露発言によってすっかりペースを狂わされた形だった。全日本キック離脱以来、二人三脚でここまで魔裟斗を押し上げてきた伊原会長にすれば、愛弟子のそんな突っ張りより、事実を明るみに出して賞賛してやってくれという気持ちが強かったのだろう。

意外な暴露劇で浮かび上がったのは、やはり魔裟斗という選手のストイックさと精神力の強さであった。
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