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HERO'S徹底分析(1)過去編 前田&K-1合従連衡の背景(2ページ目)

2005年格闘技界最大の謎と言えるのが、宿敵関係だったK-1と前田日明の再合体だろう。かつてのRINGSー正道会館との提携以来、奇跡の合従連衡実現の影に居たのは誰か?

執筆者:井田 英登

大会随所に覗いた慧舟会の協力

今回の興行でも、エース宇野薫の登場はもちろん、オープニングマッチで慧舟会所属の内藤征弥が起用されている。さらに、これは結局実現しなかったのだが、もう一試合、ミドル級のエース格門馬秀貴の試合も、同じくオープニングマッチの第二試合として企画されていた(パンフレット代わりに当日会場で配布されたフリーペーパーTOKYO HEAD LINE(後援)の特別版に“対戦相手未定”として記載)こうした事から見ても、慧舟会の存在がイベント随所に覗いている。関係者の話では、外人のブッキングに関しても慧舟会の肝入りであるブッカーが動いたという。

これまで、表面的に「HERO'S」の成立は、前田と協力関係が出来たビッグマウス上井氏が企画、K-1に選手の貸し出しや媒体との折衝(要するにテレビ放映権やスポンサー獲得)を要請し、3月一ヶ月で急遽立ち上げた、という構図で語られてきた。

しかし、一部の目ざといファンがネット掲示板などで指摘しているように、このイベントは上井&前田のコンビが動き出す以前から始動している。上井氏がこのイベントの準備に入ったと言われるのは二月後半の話だが、3月分のテレビガイド雑誌には3/26「HERO'S」の情報が前もって記載されていたりする。入稿作業を考えると、この話がもっと早い段階から決定事項になっていなければおかしい。

元々、山本“KID”徳郁、B・Jペン、須藤元気、宮田和幸といった活きのいい中量級の人材を抱えたK-1/FEGが、中総合版「K-1 MAX」として「ROMANEX」の刷新を計画していたのも周知の事実。

TBSは「Dynamite!!」の二年連続の高視聴率をキックボードに、懸案であったK-1 MMA路線のイベント復活にゴーサインを出したわけだ。

FEGではこのところ共同歩調を取る事の多い慧舟会の協力のもと、春先の大会開催に向けてプランを模索していたのであろう。結局、2/7の代々木大会は、準備期間までにあまりに時間がないこともあって流産したものの、3月のTV番組改編期スペシャルに次の照準が据えられたというわけだ。

そこに、プロレスイベント「Wrestle-1」の旗揚げを目論むビッグマウス・上井文彦プロデューサーが合流。ビッグマウス側は、前田日明という希有のタレントを引っ張りだす事に成功しており、前田をアドバイザーとして担ぐ事で、「HERO'S」への訴求力は一気に増す。三者三様の思惑が合致したジョイントベンチャーの形で「HERO'S」=前田復活興行という流れが出来た、と考えると、全ての平仄があう。

FEG社長・谷川貞治氏と上井氏の間には、上井氏の新日本プロレス取締役時代に築いた太いパイプが存在し、この段階での話し合いは本当にあれよあれよという間に形になっていったであろう事が予想できる。

ただ問題は、担がれる立場の前田日明の心証であろう。なにしろ前田と谷川氏の間には、SRS-DX編集長時代に取材拒否を宣言するほどの遺恨があり、さらにK-1のオーナーである石井和義プロデューサーとの間には、RINGS黎明期に遡る反目が存在する。

1991年、RINGS旗揚げ当時、他団体に積極的に打って出る空手家集団として名を馳せた、石井和義館(当時)長率いる正道会館とRINGSは選手派遣で提携関係に入る。数年の蜜月関係が続いた後、石井館長はRINGS参戦で得たUWFスタイルの興行ノウハウを投入して、イベントK-1をスタート。

一説にはヘビー級キックボクサーを一堂に集めてのトーナメントというアイディアは、当初RINGS側が企画していたという話もあり、一気に成功の坂を駆け上って行ったK-1とRINGSの関係は一気に冷え込む。

そして1993年、前田の怪我による欠場を補うため、K-1の日本人エース佐竹雅昭の貸し出しを申し入れたところ、正道会館は自主興行開催を理由に拒否。だが、当該興行は結局開催されず、これを受けた前田日明は一方的に「提携終了」を宣言する。

以来両者の間には、冷戦状態が生まれ、事あるごとに前田はマスコミを通じて正道会館/K-1への痛烈な舌戦を挑むことになるが、石井館長(当時)は一切応じる事は無かった。

そして、UWF以来前田を押し上げて来た上昇気流は、この辺りを機に石井K-1へと、その気まぐれな風向きを変えていくことになる。
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