【第一回】総合格闘技は、古代オリンピックの花形だった
【第二回】オリンピックを目指す世界の新格闘団体たち
【第三回】日本のアマチュア総合格闘技状況分析

“社会体育”を標榜する武道

5月16日、仙台市宮城県スポーツセンターでは、アマチュア総合史上歴史に残る大会が開催されようとしていた。

「2004年全日本空道北斗旗体力別大会」である。
北斗旗とは、空手から派生した総合格闘技“空道”を提唱する大道塾が提唱する大会で、年二回5月の体力別(いわゆる階級制)大会と年末の無差別大会の二つの全日本大会が開催される。そして2001年には初の世界大会を開催。4年に一度というオリンピックやサッカーワールドカップ同様のサイクルで開催され、世界20以上の支部から送り込まれるトップ選手が一堂に会する舞台となる。

例年これらの大会は、提唱元の大道塾主催で行われてきたが、今年からNPO法人「国際空道連盟」がニュートラルな立場の競技統括と主催を行うことになった。後援には文部科学省が付いた。いわゆる「一空手道場の自主大会」を超え、初めて“一般競技”としての性格を持った大会となったのである。

以前にもオールアバウトのコラムでは昨年2003年の体力別大会での長田賢一選手の戦いぶり模様をレポートしたことがあるので、お読みいただいた読者の方もあるだろう。

空道スタイル”
まるで宇宙飛行士のようなスタイルだが、スピーディで切れのある攻防は説得力にあふれている。
「北斗旗ルール」と呼ばれる彼らのルールは、通常の総合格闘技を見慣れた目には若干特異に映るかもしれない。胴着着用は空手時代からの名残として、顔面にはスーパーセーブと呼ばれる透明の防護マスク、拳にはオープンフィンガーグローブではなく“拳サポーター”と呼ばれる防具。胴着を掴んでの投げも有効で、試合中2回、各々30秒間のグラウンド攻撃が許されており、絞めや関節技による一本勝ちも認められている。

またアマチュア競技としての安全性から、グラウンドパンチは寸止めと規定されているが、ポジションを確保した上で規定の秒数連打を行った場合には一本勝ちや効果が奪える。プロのようにダメージ本意ではないが、技術としてはきちんと世界標準の総合格闘技が備えるべきものを全て取り込んでいる。

グラウンドパンチの取り扱いでもわかるとおり、どこまでも激しく戦える要素を残しながら、身体の安全性にこだわって設定されたルールが何よりも特徴的だ。

元々、創始者の東孝塾長は「社会体育」を標榜し、プロ競技者として生活することではなく、一般の社会人として生活しながら、余暇に競技を続けていくスタイルを提唱してきた。そのため、競技者は皆アマチュアばかりである。一部、大道塾系の道場経営者、指導者として生活の基本を立てている人間も居るが、サラリーマンと学生がほとんど。中には銀行員や大学教員といったエリートでありながら、このルールで戦い続けている選手も居る。(実際、女子部、少年部といったクラスのほかに、仕事が忙しくなかなかコンスタントに練習できないミドル層を対象とした「ビジネスマンクラス」の大会までが存在する。)

アマチュア競技として構想され、上位にプロ組織を持たない空道の特殊性はまさにここにある。

したがって競技の頂点を追及する年二回の大会の性質も、きわめてアマチュア的ですっきりしている。仕事が忙しかったりすれば、大会出場を断念して日々の生活を優先するし、気持ちが高まってくればまた競技者として前線に復帰してくる。生涯競技者の心構えがあるためだろう、40を超えた選手が平気で学生と試合を行い、時に優勝してしまったりするのである。