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〈北海道警察〉シリーズ最新第3弾(2ページ目)

警察小説の名手・佐々木譲の〈北海道警察〉シリーズ。その最新刊の登場です。

執筆者:福井 健太

〈北海道警察〉シリーズ第2作
『警察庁から来た男』

『警察庁から来た男』
北海道警察に派遣された監察員のターゲットは何なのか? そして佐伯が追う"転落事故"の真相とは? 刑事たちの誇りを描くシリーズ第2弾。
佐々木譲の『笑う警官』が好評を博したことは前ページで述べたが、2006年に刊行された続編『警察庁から来た男』も前作に劣らない秀作だった。警察庁の警視正・藤川春也が"特別監察員"として北海道警察に派遣され、半年前に裏金問題の証言をした津久井に協力を要請する。ホテル荒らしを調べていた佐伯は被害者が"転落事故"の犠牲者の父親だと知り、不審な"事故"の再調査を行うことにした。まったく無関係に見える2つのストーリーは、やがて意外な形で1本に重なっていく。キャリア組と現場の刑事――立場の異なる男たちの活躍を描く一級品のエンタテインメントである。

シリーズ最新刊『警官の紋章』

そして2008年末――待望のシリーズ第3作『警官の紋章』が書き下ろしで発表された。"サミット警備結団式"を1週間後に控える北海道警察で、勤務中の巡査・日比野伸也が拳銃を持ったまま失踪した。現場付近ではライフルを積んだ猟友会の車が盗まれ、津久井は日比野の足取りを追うことになる。いっぽう佐伯は2年前の覚醒剤密輸事件(のおとり捜査)に疑惑を抱き、格闘技に長けた巡査・小島百合は特命大臣のSPを命じられる。彼らの任務は互いに交錯し、厳戒態勢の敷かれた式典会場へと収束していく。シリーズの軸である津久井と佐伯に加え、本作では――前作の藤川に代わって――婦人警官である小島の奮闘が描かれるが、彼女もまた誇りを賭けて奔走する"佐々木節"のキャラクターにほかならない。並列的なドラマが繋がっていく構成も含めて、ここでは読者の求める定番が踏まえられているのだ。

2007年版『このミステリーがすごい!』の第2位に選ばれた『制服捜査』、2008年版(同書)の第1位に輝いた『警官の血』など、著者は年間ベスト級の警察小説を次々に発表している。そんな実力者が――重厚さではなく――明快な娯楽性を目指したものが〈北海道警察〉シリーズと言えるだろう。一番の正解は"どちらも読むこと"なのである。

【関連サイト】
『佐々木譲資料館』…著者自身による公式サイト。日記ブログや作品リストなどがあります。
【編集部おすすめの購入サイト】
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