"誇り"を描く作家・佐々木譲

『ベルリン飛行指令』
時は1940年――不可解な写真の真相を探るため、2人のパイロットが零戦を駆ってベルリンへと向かう。〈第二次世界大戦〉三部作の劈頭を飾る冒険小説の名作。
〈D県警〉シリーズで知られる横山秀夫、多くの文学賞に選ばれた〈隠蔽捜査〉シリーズの今野敏など、多彩な作家たちの活躍によって――かつてないほどに――日本の警察小説は活況を呈している。佐々木譲もその中心作家の一人だ。1950年に北海道で生まれた佐々木は、1979年に『鉄騎兵、跳んだ』で第55回オール讀物新人賞を受賞してデビュー。1988年の『ベルリン飛行指令』が絶賛を浴び、翌年には続編『エトロフ発緊急電』で第43回日本推理作家協会賞と第3回山本周五郎賞を獲得した。ハードボイルドや国際謀略小説に加え、北海道を舞台にした異色のウェスタン小説なども手掛けており、その"人間の誇り"をモチーフにした端正な作風は多くのファンを魅了している。

佐々木が2004年末に上梓した『うたう警官』(後に『笑う警官』に改題)は、2006年版『このミステリーがすごい!』の第10位に選ばれている。札幌のマンションで婦人警官・水村朝美の死体が発見され、その恋人だった巡査部長・津久井卓が容疑者として浮上した。かつて津久井とコンビを組んだことのある警部補・佐伯宏一は、その嫌疑を晴らすために極秘裡の捜査を開始するが、上層部からは――道議会で"警察の不祥事"を証言する予定の――津久井の射殺命令が下される。佐伯は津久井を議会へ送り届けられるのか? 現実の汚職に着想を得て書かれた本作は、隠蔽工作と闘う刑事たちのドラマにして、スリリングなタイムリミット・サスペンスにもなり得ている。ちなみに2009年秋には映画化が予定されており、監督はあの角川春樹。1998年の『時をかける少女』以来、実に11年ぶりの監督最新作である。

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