若竹七海のミステリーな著作群
12編の作中作を内包する短編集にして、その著者を探す長編でもある――スマートな技巧が凝らされた記念すべきデビュー作。 |
コージーミステリーへの愛着
ハードボイルドの対立概念として生まれたコージーミステリーでは、女性のアマチュア探偵が小さなコミュニティの事件を(暴力抜きに)解決することが多い。アガサ・クリスティの〈ミス・マープル〉シリーズ、テレビドラマ〈ジェシカおばさんの事件簿〉シリーズなどをイメージすれば解りやすいだろう。若竹はその熱心なマニアであり、自らも――架空の街を舞台にした――コージーミステリーを数多く手掛けている。いわばこの分野の日本における第一人者なのだ。次のページでは〈葉崎市〉シリーズを見ていきましょう。