ミステリー小説/ミステリー小説関連情報

恋の謎、謎の恋

2月14日はバレンタインデー。年に一度の恋のお祭りにちなんで、恋愛小説として読めるミステリー、ミステリーとして読める恋愛小説をご紹介します。

執筆者:石井 千湖


2月14日はバレンタインデー。恋する気持ちを物語で味わってみるのはいかが? 心とろかすような甘いものから、大人っぽいビターなものまで、さまざまな恋愛ミステリーを紹介します。なかでも、恋する人間の心理そのものが魅力的な謎になっている5冊をセレクトしました。まずはミステリーらしい大胆な仕掛けが見事にはまっている3冊からどうぞ。

美しい文章で描かれる心中事件の謎――伝説の名作、復活!連城三紀彦『戻り川心中』

戻り川心中
『戻り川心中』は「花」にまつわる恋愛ミステリーを収録した連作短篇集。男女の愛の悲劇を格調高い文章で描いています。
大人の恋愛+本格ミステリ、といえば連城三紀彦。なかでも完成度の高い名作として知られるのが「戻り川心中」です。ところが「戻り川心中」を収めた短篇集は、講談社文庫版もハルキ文庫版も品切れ重版未定。“いったいどうなってるの?”と思っていたら、光文社文庫で復刊したという知らせが。よかったよかった。

舞台は大正時代。天才歌人・苑田岳葉(そのだがくよう)は2つの心中未遂事件を起こします。1度目は2人とも助かりますが、2度目は相手の女性だけが死亡。一命をとりとめた苑田も事件のことを歌に詠みあげたあと、死を選びます。苑田の友人だった「私」は彼の生涯を小説にするのですが、最終章を書くためにあらためて資料を調べるうちに、2度目の心中について疑問を抱きます。

一緒に薬を飲んだはずなのに、女は手首を切って死んでいたこと。同じ日、最初の心中未遂の相手が、遠く離れた場所で自害していたこと。心中の前日泊まっていた部屋に飾られていた花菖蒲が、しおれていたはずなのに蘇ったこと。苑田が遺した歌に隠された真相とは? 恋する者は皆エゴイストだという冷徹な視点とロマンティシズムを併せ持つ稀有な作品。結末のどんでん返しが鮮やかです。

甘い甘い青春ラブストーリーが一転、驚きのラスト2行乾くるみ『イニシエーション・ラブ』

イニシエーション・ラブ
登場人物のバカップルぶりに若い頃のアイタタタな恋愛経験を思い出して赤面。『イニシエーション・ラブ』というタイトルも意味深です。
“ラストにたどりついたとき、すぐ最初から読み直さずにはいられない”と評判の本書には、「君は1000%」「ルビーの指輪」「SHOW ME」などのヒット曲、トレンディドラマの原点と言われる「男女7人夏物語」など、80年代に青春を過ごした人なら特に、懐かしいモチーフが満載。長編小説を1枚のレコードに見立て、「side-A」と「side-B」の二部構成になっています。

「side-A」は、大学4年生の「僕」が合コンでひとめぼれしたマユと付き合って、初めてのクリスマスを迎えるまで。僕のファッションや車、就職先などを、さりげなく自分の望む方向に誘導するマユ。一見おとなしそうなのに、欲しいものをつかむ握力は強い。“いるいる、こういう女の子”と具体的な人名まで思い浮かべる人も多いのではないかと。「side-B」は僕とマユが遠距離恋愛になってからの顛末。学生時代にはじまった恋愛が、就職をきっかけに壊れる。この展開も“あるある”という感じです……が!

最後のページ、たった2行でまったく別の物語が見えてくる。精巧に描かれた騙し絵のような1冊です。

直木賞受賞&ベストミステリー3冠王の強力な1冊東野圭吾『容疑者Xの献身』

容疑者Xの献身
『容疑者Xの献身』は天才VS天才の息詰まる攻防も見もの。「本格か、本格じゃないか?」「隣の女性はここまで献身するほど魅力的か?」など、話題作だけにいろんな論議も巻き起こしました。
2005年末「このミステリーがすごい!」「週刊文春 傑作ミステリーベスト10」「本格ミステリベスト10」で3冠を達成、第134回直木賞も受賞。いまさら紹介するまでもない話題作です。お読みになっている方も多いことでしょうが、面白い恋愛ミステリーを選ぶとなると本書ははずせません。

数学者としての将来を嘱望されながら、不運な事情が重なり、高校教師になった石神。家族も恋人も友達もいない。そんな孤独な石神の楽しみは、アパートの隣に住む女性が働く弁当屋で昼食を買うこと。そして衝動的に殺人を犯してしまった隣人のために、石神は完全犯罪を目論見ます。警察は翻弄されますが、物理学者にして名探偵の湯川が登場し、天才的な頭脳と揺るがない理性を持つ石神もじわじわと追い詰められていくのです。

石神と隣人の女性のあいだには、殺人事件が起こるまで、交流らしいものはありません。絶世の美女でもない、ほとんど口をきいたこともない、娘と2人でつつましやかに暮らす中年女性。いったい彼女の何が、沈着冷静な石神の心を動かしたのか。考えぬかれた犯罪のなかで、“献身”の動機だけが論理的ではないからこそ、説得力があります。

次ページには“究極のすれちがい”を描いた1冊が!>>


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