難事件の続発する"呪われた街"

『プラスマイナスゼロ』
まるで性格の違う女子高生トリオがトラブルに遭遇する連作短編集。軽妙さとブラックユーモアを存分に楽しめる技ありの1冊だ。
若竹七海のコージーミステリーには、神奈川県の(架空の)街・葉崎市を舞台にしたものが多い。海岸で溺死体を発見した不運な女性が探偵役を務める『古書店アゼリアの死体』、不動産屋が殺人事件に巻き込まれる『ヴィラ・マグノリアの殺人』、女子中学生が兄の無実を証明しようと奔走する『クール・キャンデー』、民宿の娘が怪事件を暴く『猫島ハウスの騒動』――これらの設定からも解るように、登場人物は作品ごとに異なっている。葉崎市という"場所"こそがシリーズの柱になっているのだ。

そんな〈葉崎市〉シリーズの最新刊『プラスマイナスゼロ』は、3編の書き下ろしを含む6編を収めた連作短編集。葉崎山高校に通う女子高生たち――天知百合子(テンコ)、黒岩有理(ユーリ)、崎谷美咲(ミサキ)の奮闘を描くユーモア青春ミステリーだ。成績優秀にして品行方正だが運の悪い天知、極悪腕力娘の黒岩、歩く平均値・崎谷から成る「プラスとマイナスとゼロ」トリオは次々に騒動に巻き込まれるが、その"騒動"は狭義のミステリーとは限らず、時には本物の幽霊に取り憑かれたりもする。そんな"何でもあり感"がポップさに繋がっているのは明らかだが、最終話に1年前の出来事を配し、トリオの結成秘話で締めるという演出もまた心憎い。テクニカルな軽妙さを楽しめるスマートな好著と言えるだろう。

【関連サイト】
『プラスマイナスゼロ』JIVE公式サイト内の新刊紹介ページです。

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