世界初の長編ミステリー
『ルルージュ事件』
パリ郊外の村で寡婦が殺された。アマチュア探偵・タバレが暴いた意外な真相とは? 世界初の長編ミステリーと称される歴史的価値の高い1冊だ。 |
1862年3月――パリ郊外のラ・ジョンシェール村で、寡婦クローディーヌ・ルルージュの他殺死体が発見された。被害者とその元夫の素性を誰も知らないことが判明し、捜査の難航を予想したパリ警視庁のルコック刑事は、アマチュア探偵のタバレに協力を要請することにした。タバレは次々に謎を解き明かすものの、やがて事件は思わぬ展開を見せることに……。設定と展開は(現在の目から見ても)オーソドックスなものだが、これは"元祖"としては自然なことだろう。「著名な警察関係者の回想録というのはよくできた物語のようで、興味の尽きないものです」とタバレに言わしめた著者は、現実の捜査から着想を得たうえで、そこに意外性の魅力を盛り込んでみせた。かくして本作はスリリングな捜査と逆転劇を備えたミステリーになり得たのである。
1世紀半前に書かれた物語だけに、現代的なミステリーよりもテンポが悪いきらいはあるが、それも含めたレトロ感を楽しむのが賢明というものだろう。ミステリー史を教養主義的に押さえたい人はもちろん、そうでない人もレアな読書体験を得られることは間違いない。本書の刊行は翻訳ミステリーの歴史における大きな道標なのだ。
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