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村上春樹があの名作を翻訳

小説家としてはもちろん、翻訳家としても活躍する村上春樹。名作の新訳にも挑戦しています。『キャッチャー・イン・ザ・ライ』や『グレート・ギャッツビー』の次に選んだのは、あのハードボイルドの金字塔!

執筆者:石井 千湖


小説家としてはもちろん、翻訳家としても活躍する村上春樹。ここ数年、よく知られた名作の新訳にも挑戦しています。『キャッチャー・イン・ザ・ライ』『グレート・ギャッツビー』の次に選んだのは、あのハードボイルドの金字塔! 3月8日の発売前に、まずは長らく愛されてきた清水俊二訳を再読してみましょう。

名セリフが記憶に残る清水訳

長いお別れ
ギムレットが飲みたくなる!
『長いお別れ』は、LAの私立探偵・フィリップ・マーロウが主人公の長編第6作。チャンドラーの最高傑作と言われている作品ですし、シリーズものといっても内容は一冊で完結しているので、この本から読んでも大丈夫です。

物語は、マーロウが妙に礼儀正しい酔っ払い、テリー・レノックスに出会うところから始まります。金も妻もねぐらも失くしたテリーを、マーロウは家に泊める。それから、一緒に酒を飲むような友達になります。その後、テリーは自分を一度捨てた億万長者の娘・シルヴィアと再婚。マーロウとはしばらく会わない日々が続き、再会したときには、テリーは追われていました。シルヴィアが惨殺されたのです。テリーはマーロウの協力でメキシコに逃げますが、結局は犯行を告白した手紙を残し、死体で発見されます。

シルヴィアの父が大物だったため、事件はロクに調べられることもなく、解決したことにされてしまう。マーロウは別の依頼で、ある作家が抱えるトラブルに関わったことをきっかけに、再びテリーの事件に巻き込まれることになるのです。事件の全貌は、わかってみるとそれほど驚きはありません。ただ、明かすタイミングと演出が絶妙。かなり簡潔な地の文で、テンポ良くストーリーが進んでいきます。

そして何といっても印象に残るのはセリフ。特に、バーでお酒を飲んでいるときのマーロウとテリーの会話は名セリフだらけです。テリーの好きなカクテルが、ギムレット。

「ギムレットにはまだ早すぎるね」

終盤の重要なシーンで出てくるこのセリフは有名。読んだことがなくても、ご存知の方は多いでしょう。村上訳ではこのシーンがどんな風に翻訳されるのか。楽しみです。

次ページでは村上訳の読みどころを紹介!>>>

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