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騙しの職人・連城三紀彦の最新刊(2ページ目)

奇抜なアイデアと話術を備えた"騙り"の名手・連城三紀彦。その最新刊『造花の蜜』は大胆な企みに満ちたトリッキーな1冊です。

執筆者:福井 健太

意外性に満ちた誘拐ミステリー
『造花の蜜』

『造花の蜜』
1人の幼稚園児が誘拐された――が、これは事件の表層に過ぎなかった。どんでん返しの連続が読者を幻惑する本格ミステリー。
1990年代の半ばから恋愛小説に専念していた連城三紀彦は、2002年に『白光』『人間動物園』の2作でミステリー界に復帰している。しかし――両作は高く評価されたものの――2003年に『流れ星と遊んだころ』が上梓された後、新作は長らく発表されていなかった。最新刊『造花の蜜』は実に5年ぶりの長編なのである。

幼稚園児の圭太を1人で育てている小川香奈子は、スーパーで誘拐されかけたという話を圭太に聞かされる。香奈子は別れた夫・山路将彦の仕業だと考えるが、やがて本当の誘拐事件が発生した。香奈子を騙る人物が幼稚園から圭太を連れ去ったのだ。唯一の目撃者である担任は「あなたにちゃんと圭太クン渡したじゃないですか」と言い張り、さらに誘拐犯は奇妙な要求を突きつけてくる。2000万円を支払うという香奈子に対し、1000万円を渋谷のスクランブル交差点に置けというのだが……。
誘拐事件は一応の結末を迎えるものの、その背後には――警察も知らない――様々な思惑が渦巻いていた。巧みに仕組まれた"操り"と逆転劇、大胆な犯罪が描かれるクライマックスなど、ここには読者を騙そうとする稚気が凝縮されている。発想の転換によって誘拐テーマの新機軸を拓いた"連城ワールド"の最新バージョンなのである。

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