ミステリー小説/ミステリー小説関連情報

騙しの職人・連城三紀彦の最新刊

奇抜なアイデアと話術を備えた"騙り"の名手・連城三紀彦。その最新刊『造花の蜜』は大胆な企みに満ちたトリッキーな1冊です。

執筆者:福井 健太

デビューから柴田錬三郎賞まで

『戻り川心中』
2度の心中を経て自害した大正期の天才歌人・苑田岳葉。彼の真意は何処に隠されていたのか? 5編の〈花葬〉シリーズを収めた傑作集。
連城三紀彦は1948年愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。若い頃から文学や映画に関心を抱き、大学時代にはシナリオ研究のためにパリへ留学している。1978年に第3回幻影城新人賞の受賞作「変調二人羽織」でデビューを果たし、叙情性とトリックを融合させた〈花葬〉シリーズを次々に発表。1980年にはその1編「戻り川心中」が第34回日本推理作家協会賞に選ばれた。恋愛小説にも優れた作品が多く、1983年に短編集『宵待草夜情』で第5回吉川英治文学新人賞、翌年に『恋文』で第91回直木賞を受賞したほか、1996年には『隠れ菊』で第9回柴田錬三郎賞を獲得している。ミステリー作家としての発想力と(叙情的な)物語作家としての手腕を兼ね備えた実力派であることは、そんなプロフィールをざっと見るだけでも明らかだろう。

ミステリー作家としての連城三紀彦

『敗北への凱旋』
1948年のクリスマスイブに隻腕の男の死体が発見された。難解な暗号に秘められた真意とは? 壮大な動機を描く野心的な本格ミステリー。
恋愛小説で名を高めた書き手ではあるものの、著者の本領がトリッキーな"騙し小説"にあることは間違いない。読者の意表を突くプロットを執拗なまでに練り上げ、卓越した話術によって小説化する――そんな超絶技巧の第一人者なのだ。7人が同じ女性を殺害する『私という名の変奏曲』、何度も"殺された"男を描く『どこまでも殺されて』などの傑作群は、奇想と表現力の相互作用によって生み出されたのである。
多彩な視点を通じて逆転劇を重ねること――あるいは〈花葬〉シリーズや『敗北への凱旋』に代表される"意外な動機"の提示などを通じて、著者はすこぶる独創的な"連城ワールド"を創造してみせた。恋愛作家だと思っている人も多そうだが、その正体は(恐らくは日本最強の)トリッキーなプロットを駆使するミステリー作家なのである。

次のページでは『造花の蜜』を御紹介します。
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