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ホラー小説界の超新星、ジョー・ヒル(2ページ目)

ホラー小説界に颯爽と現れた新鋭ジョー・ヒル。その初短編集『20世紀の幽霊たち』が注目を集めています。

執筆者:福井 健太

現代ホラーの新たな名著
『20世紀の幽霊たち』

『20世紀の幽霊たち』
ホラー小説の各賞を総なめにした著者の初短編集。圧倒的なまでのクオリティとボリュームを誇る1冊だ。
ジョー・ヒルの初短編集『20世紀の幽霊たち』が絶賛を浴び、ブラム・ストーカー賞、英国幻想文学大賞、国際ホラー作家協会賞などを獲得したことは先に触れたが、もう少しだけ詳しく紹介しておこう。本書の日本版には――初刊版にボーナストラックなどを加えた――全16編(数え方によっては17編)および、クリストファー・ゴールデンの序文、著者による自作解説などが収められている。ホラーを軸にした作品集ではあるものの、ファンタジーや幻想小説の香気、純文学の手触り、シュールの味わいなどを備えているのは大きな特徴といえるだろう。「年間ホラー傑作選」では怪奇小説の王道を感じさせ、マジックリアリズム小説「ポップ・アート」では空気人形(人間)との交流を叙情的に描き、異色作「アブラハムの息子たち」ではアメリカナイズされた吸血鬼狩りを活写し、さらに「末期の吐息」では"末期の吐息"博物館の出来事をブラックユーモアたっぷりに綴ってみせる――ここには定型に縛られない闊達さが宿っているのだ。

作中で言及される固有名詞から察するに、本書はジャック・フィニイやロアルド・ダールといった"異色作家"たちの影響下にある。言い換えれば本書は"異色作家"好きにも適しているわけだ。かくも高品質の(700ページ近い!)翻訳作品集が1000円以下で読めるという事実も大いに喜ばしい。多くの読者に強くプッシュしておきたい、今年度のエンタテインメント界を代表しうる傑作短編集なのである。

【関連サイト】
Joe Hill Fiction…ジョー・ヒルの公式サイト。「末期の吐息」ゲームが楽しめます(全文英語)。
【編集部おすすめの購入サイト】
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