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デニス・ルヘインの最新作が来日!(2ページ目)

デニス・ルヘインの5年ぶりの新作『運命の日』が上梓されました。多くのファンが待ち望んだその内容に迫ります。

執筆者:福井 健太

大胆な趣向が凝らされた
異形のサスペンス

『シャッター・アイランド』
復讐のために執拗な捜査を続けるテディ・ダニエルズ。彼の前に突きつけられた恐るべき真相とは? 異様な結末が用意された野心的な物語である。
2003年に発表された第7長編『シャッター・アイランド』は1954年の夏の物語。3人の子供を殺した女が凶悪犯専用の精神病院から消えた――という事件を調べるため、テディ・ダニエルズはボストン沖の孤島"シャッター島"での捜査を続けるが、彼の真意は別の所にあった。本当の目的は収監されている(妻を殺した)放火魔への復讐だったのだ。施錠された病室から消えた女、現場に残された「ローオブフォー」というメッセージなどの謎に直面したテディは、やがて恐るべき真相を聞かされることになる。著者自身が「『ミスティック・リバー』のあとの課題は『ミスティック・リバー』的作品のサイクルに囚われてしまわないことだった。だから私は『シャッター・アイランド』を書いた」と述べているように、ここでは――多くの読者が驚いたであろう――大胆な転身が図られている。古典的にして大胆なトリックが全編に仕掛けられた、ルヘインの技巧派ぶりが存分に楽しめる異形のサスペンスなのだ。

5年ぶりの最新作『運命の日』

『運命の日』
ボストン市警のストライキを軸として、多彩な人々の"絆"を活写したスリリングな歴史小説。ルヘインの新たな代表作の誕生と言えるだろう。
5年ぶりに発表された最新長編『運命の日』は、1919年に起きたボストン市警のストライキと暴動をめぐる物語である。物価の高騰、繰り返されるテロ、インフルエンザの大流行などで社会不安の高まっていた時代――ボストン市警のダニー・コグリン巡査は市警の組合への潜入調査を命じられるが、やがて警官の待遇を改善すべきだと考えるようになる。オクラホマでギャングを殺害したホテル勤めの黒人ルーサー・ローレンスは、逃走先のボストンでコグリン家の使用人となった。ルーサーはコグリン家に様々な影響を与えていくが、ついに"その日"がやって来た。1400人の警官がストライキに突入し、街は暴徒の手に委ねられたのだ。ミステリー色はさほど強くないものの、歴史的事件を背景に描かれた人々のドラマは読者の胸を打つに違いない。重厚な歴史小説としても楽しめる――訳者の言葉を借りて言えば――「本当に、五年待った甲斐があった」傑作である。ちなみに本作は"あの"サム・ライミ監督による映画化も決定している。公開が今から楽しみな限りなのだ。

【関連サイト】
Dennis Lehane Books…デニス・ルヘインの公式サイトです(全文英語)。
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