多芸家としての西村京太郎
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デート中に殺人現場に遭遇した新聞記者・田島は、事件の原因となった社会的悲劇に肉薄していく。第11回江戸川乱歩賞受賞作 |
そんな彼の最初のヒット作が『名探偵なんか怖くない』『名探偵が多すぎる』『名探偵も楽じゃない』『名探偵に乾杯』の4作からなる〈名探偵シリーズ〉だ。世界のミステリーに登場する名探偵――メグレ警視、エラリー・クイーン、エルキュール・ポワロ、明智小五郎などが一堂に会するパロディにして、洒脱なユーモアと本格的な謎解きが楽しめる好シリーズ。今もなお「著者の最高傑作」と評する人が少なくない名作である。
海洋ミステリーと左文字進
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雪に閉ざされた山荘で連続殺人が発生した。犯人はこの中にいる! 読者を欺く巧緻なトリックが施された本格ミステリーの傑作 |
ちなみに――海洋モノではないけれど――閉鎖空間モノの本格ミステリー『殺しの双曲線』、青春ミステリー『おれたちはブルースしか歌わない』などの秀作が書かれたのもこの頃である。
西村作品のシリーズキャラクターとしては、1976年に『消えた巨人軍』で初登場した私立探偵・左文字進も忘れることはできない。左文字はサンフランシスコで私立探偵を開業したアメリカ生まれのハーフだが、現在は新宿に事務所を構えている。『華麗なる誘拐』『ゼロ計画を阻止せよ』『盗まれた都市』『黄金番組殺人事件』などで活躍するハードボイルド型の名探偵だ。
次のページでは西村京太郎のトラベルミステリーを御紹介します。