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村上春樹があの名作を翻訳(2ページ目)

小説家としてはもちろん、翻訳家としても活躍する村上春樹。名作の新訳にも挑戦しています。『キャッチャー・イン・ザ・ライ』や『グレート・ギャッツビー』の次に選んだのは、あのハードボイルドの金字塔!

執筆者:石井 千湖

一字一句を大切にした村上訳

ロング・グッドバイ
清水氏が省略した部分も翻訳した完全版。
2月25日発売の「ミステリマガジン」4月号はチャンドラー特集。そこに、村上訳の冒頭が掲載されています! 村上氏による「準古典小説としての『ロング・グッドバイ』」と題した文章には、なぜ『ロング・グッドバイ』を訳すことになったのかという経緯が書かれています。そこでわかるのは、清水訳は省略している部分がけっこうあるということ。抄訳とまではいかないけれど、読みやすい分、こぼれてしまったところがあるようです。今回の村上訳は、その省略された部分も翻訳しているのだそう。

例えば冒頭のテリーがロールス・ロイスの中で酔っ払っているシーン。清水訳では、よく考えるとどんな状況なのか、どんな動作をしているのか曖昧な部分があったのですが、村上訳を読んで「なるほど」と思ったりしました。

英語がわからないので、原文と対照してどう、ということは指摘できないのですが、日本語だけを読み比べてみても面白い。文章の雰囲気や、テリーのキャラクターの印象も違います。村上訳の方がより礼儀正しく、人なんて殺せなそうな感じ。

清水訳の初版が出版されて約50年。こうやって名作が生まれ変わるのは、読者にとっても歓迎すべきことなのではないでしょうか。

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