小説家としてはもちろん、翻訳家としても活躍する村上春樹。ここ数年、よく知られた名作の新訳にも挑戦しています。『キャッチャー・イン・ザ・ライ』や『グレート・ギャッツビー』の次に選んだのは、あのハードボイルドの金字塔! 3月8日の発売前に、まずは長らく愛されてきた清水俊二訳を再読してみましょう。
名セリフが記憶に残る清水訳
ギムレットが飲みたくなる! |
物語は、マーロウが妙に礼儀正しい酔っ払い、テリー・レノックスに出会うところから始まります。金も妻もねぐらも失くしたテリーを、マーロウは家に泊める。それから、一緒に酒を飲むような友達になります。その後、テリーは自分を一度捨てた億万長者の娘・シルヴィアと再婚。マーロウとはしばらく会わない日々が続き、再会したときには、テリーは追われていました。シルヴィアが惨殺されたのです。テリーはマーロウの協力でメキシコに逃げますが、結局は犯行を告白した手紙を残し、死体で発見されます。
シルヴィアの父が大物だったため、事件はロクに調べられることもなく、解決したことにされてしまう。マーロウは別の依頼で、ある作家が抱えるトラブルに関わったことをきっかけに、再びテリーの事件に巻き込まれることになるのです。事件の全貌は、わかってみるとそれほど驚きはありません。ただ、明かすタイミングと演出が絶妙。かなり簡潔な地の文で、テンポ良くストーリーが進んでいきます。
そして何といっても印象に残るのはセリフ。特に、バーでお酒を飲んでいるときのマーロウとテリーの会話は名セリフだらけです。テリーの好きなカクテルが、ギムレット。
「ギムレットにはまだ早すぎるね」
終盤の重要なシーンで出てくるこのセリフは有名。読んだことがなくても、ご存知の方は多いでしょう。村上訳ではこのシーンがどんな風に翻訳されるのか。楽しみです。
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