もうすぐ2006年も終わり。仕事納めをして、新年を迎える準備をしている方も多いことでしょう。帰省や旅行のお供に面白文庫本はいかがですか? 2007年は寝正月ならぬ“読み正月”で! 独断と偏見で選んだ2006年のオススメ文庫を5作品ご紹介します。
よくぞ復刊してくれました!【no.5】稲見一良『セント・メリーのリボン』
祝・復刊の名作 |
表題作は猟犬探しが専門の探偵・竜門卓を主人公にしたシリーズの一編。失踪した盲導犬の行方を突き止める仕事を請け負った竜門と少女の物語です。お涙頂戴になりそうな話を、品良くまとめています。
ガイドの一番のお気に入りは「焚火」。ヤクザに追われる男が、林の中の小屋に逃げ込みます。小屋の中には老人がひとりいて、焚火をしていました。熱々のジャガイモ、厚さ2センチはある大きなハムとつやつやした小指ほどの大きさの茸を焼いたもの。老人が男にふるまう料理は素朴なのに美味しそう! 読めばお腹が空くこと請け合いです。アクションシーンも切れ味抜群。お気に召したら『猟犬探偵』もどうぞ。
史上最強最悪最高(?)の天才、サマンサに出会う【no.4】池上永一『レキオス』
すべてをなぎ倒すパワフルな一冊。 |
本書の読みどころは、なんといっても超個性的なキャラクター。特にサマンサ・オルレンショーがすごいんです。アメリカが世界に誇る天才学者で、絶世の美女。ところが、常人の理解を超える変態なのです。趣味はコスプレと露出。口を開けばシモネタばかり。「レキオス」の謎を自分の研究欲のためだけに追い、状況をさらに複雑化させる元凶となります。挙句の果てには「あるもの」を改造して自分専用のスーパーコンピュータにするのですが……。あまりのマッドサイエンティストぶりにのけぞること請け合い。脇役にもかかわらず完全に主役を食っている、天上天下唯我独尊のサマンサの魅力にはまってください。
no.3とno.2はとにかくカッコいい小説!>>>