成風堂書店事件メモ・出張編大崎梢『晩夏に捧ぐ』
大崎さん念願の“横溝正史風”長編ミステリー。 |
日常の謎系統の前作よりもミステリー度はアップ。一介の素人にいくら実績があるとはいえ事件の解決を依頼するかどうかという疑問はありますが、冒頭に書店業務がある事件のアリバイを証明するエピソードを入れたりして説得力を持たせています。著名作家をとりまく人びとの愛憎、消えた原稿用紙、犯人として逮捕された青年の背景など謎がいっぱい。深まる謎と、リーダビリティの高い文章に引っぱられて一気読みしてしまいます。
そして、このシリーズの魅力といえば、書店に対する愛情。ナショナルチェーンが地方にも進出し、ネットでいつでもどこからでも本が買える時代に、地域に密着して営業する書店はどんなふうに読者との絆を深めているのか。杏子が熱く語ってくれます。読めば「まるう堂」のような書店を探してみたくなることでしょう。