ミステリー小説/ミステリー小説関連情報

期待の新人作家の第2作。

デビュー作でインタビューさせていただいた海堂尊さんと大崎梢さんの新刊が発売に。ほかにも注目作家の第2作が。

執筆者:石井 千湖


デビュー作から読んでいる作家が進化していく過程を見ることも、小説好きのひとつの楽しみ。奇遇にもAll Aboutでインタビューさせていただいた海堂尊さん大崎梢さんの新刊が近い時期に発売されました。気になる内容をご紹介します!

白鳥圭輔ふたたび!海堂尊『ナイチンゲールの沈黙』

ナイチンゲールの沈黙
「手順が悪いわ」が口癖の猫田師長など脇役も魅力的!
今回、物語の舞台になるのは東城大学医学部付属病院の小児科病棟。そこに入院する14歳の瑞人は眼球に発生する癌網膜芽腫(レティノブラストーマ)で、眼球の摘出手術を受けなければならないと診断されていました。ですが、瑞人はかたくなに手術を拒み、唯一の身内である父親にも連絡がつかない。瑞人は同じ病気を抱えるアツシや白血病の由紀、鼠経ヘルニアのヒデマサと一緒に、田口の担当する不定愁訴外来でメンタル・サポートを受けることになります。そんなとき、瑞人の父が殺されて……。

今回は聞き取り相手が子どもということで、田口も調子を狂わされっぱなし。おまけに少年は父殺しの容疑者とみなされ、警察が院内まで調査にくる。そこに超絶的な歌唱能力を持つ看護師と緊急入院した伝説の歌姫が絡み、ついには白鳥まであらわれる。人間関係は錯綜しますが、事件の犯人は誰かということはほとんど隠されていないので、そのあたりの謎解きを期待して読むと拍子抜けするかも。小児医療の現実、先端技術を使った捜査、切ない恋愛、天才の悲しみ、病気に立ち向かう勇気などなど、読みどころ盛りだくさん。つめこみすぎと感じる方もいるかもしれませんが、最後までぐいぐい引っ張る筆力はさすが。

それに『チーム・バチスタの栄光』でも楽しませてくれた病院内の人物描写とユーモラスなコネタが抜群に面白い。特に笑ったのが、ヒデマサとアツシが好きなハイパーマン・バッカスというヒーロー。ウルトラマンのパチモンらしいのですが、地球防衛軍をリストラされた酔っ払いのヒーローが正論を吐く異星人と戦うというすごい設定。バッカス友の会会長のヒデマサと白鳥が舌戦を繰り広げるくだりは爆笑必至。子ども相手でも容赦しないところが白鳥らしい。難病の子どもがストーリーの中心になっているということで、全体としては悲しい部分も多い話なのですが、こういうコネタが読後感をよくしています。

次回作も期待大。です。

次ページでは大崎梢さんの新刊をご紹介。>>

  • 1
  • 2
  • 次のページへ

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます