デビュー作から読んでいる作家が進化していく過程を見ることも、小説好きのひとつの楽しみ。奇遇にもAll Aboutでインタビューさせていただいた海堂尊さんと大崎梢さんの新刊が近い時期に発売されました。気になる内容をご紹介します!
白鳥圭輔ふたたび!海堂尊『ナイチンゲールの沈黙』
「手順が悪いわ」が口癖の猫田師長など脇役も魅力的! |
今回は聞き取り相手が子どもということで、田口も調子を狂わされっぱなし。おまけに少年は父殺しの容疑者とみなされ、警察が院内まで調査にくる。そこに超絶的な歌唱能力を持つ看護師と緊急入院した伝説の歌姫が絡み、ついには白鳥まであらわれる。人間関係は錯綜しますが、事件の犯人は誰かということはほとんど隠されていないので、そのあたりの謎解きを期待して読むと拍子抜けするかも。小児医療の現実、先端技術を使った捜査、切ない恋愛、天才の悲しみ、病気に立ち向かう勇気などなど、読みどころ盛りだくさん。つめこみすぎと感じる方もいるかもしれませんが、最後までぐいぐい引っ張る筆力はさすが。
それに『チーム・バチスタの栄光』でも楽しませてくれた病院内の人物描写とユーモラスなコネタが抜群に面白い。特に笑ったのが、ヒデマサとアツシが好きなハイパーマン・バッカスというヒーロー。ウルトラマンのパチモンらしいのですが、地球防衛軍をリストラされた酔っ払いのヒーローが正論を吐く異星人と戦うというすごい設定。バッカス友の会会長のヒデマサと白鳥が舌戦を繰り広げるくだりは爆笑必至。子ども相手でも容赦しないところが白鳥らしい。難病の子どもがストーリーの中心になっているということで、全体としては悲しい部分も多い話なのですが、こういうコネタが読後感をよくしています。
次回作も期待大。です。
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