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この秋、映画と原作で泣く!

芸術の秋。美しい映像や音楽でミステリーを楽しむのもいいですね。東野圭吾『手紙』ほか、映画と原作、ダブルで泣ける作品をどうぞ。

執筆者:石井 千湖


もう映画館やテレビで予告編を見た人もいるでしょう。小田和正の名曲「言葉にできない」が流れ、胸を締めつける「手紙」。公開に先駆けて、原作の内容をご紹介します。また、DVDで楽しめる泣ける名作ミステリー映画+原作もピックアップ!

時が経っても消えない罪東野圭吾『手紙』

手紙
10月6日に文庫化予定。
弟を大学に進学させるため、資産家の老婦人の家に忍び込んだ武島剛志。金を持って逃げようとしたとき、ふと弟の好物の天津甘栗ももらって行こうと思いたちます。そのまま去っていたら、悲劇は起こらなかったのに。はずみで人を殺してしまった剛志は刑務所へ。高校生だった弟の直貴は、行き場所を失ってしまうのです。

剛志は深く罪を悔いて、直貴との手紙のやりとりだけを楽しみに刑務所で過ごしている。でも、だんだん直貴からの返事は途絶えていきます。将来の夢も恋も、殺人犯の弟だということを知られた途端に失ってしまう。直貴は兄弟の絆を断ち切ろうとしますが……。

罪を犯したのは自分じゃない。なのにどこまでも、何年経っても過去がつきまとう。加害者の家族が直面する現実は厳しいものです。差別はいけない。だけど犯罪者にはかかわりたくない。周囲の人びとの微妙な態度の描き方が憎らしいほど巧い。酷いと思いつつ、直貴を受け入れない気持ちもわかるなぁと思ってしまうんですよね。

弟は自分への愛情ゆえに罪を犯したことを知っているので、兄を責められない。兄は弟がどんな人生を歩んでいるかも知らず、不器用な言葉で手紙を綴り続ける。痛ましい物語ですが、光る脇役が救いを与えています。たとえば直貴の勤め先の社長。せっかく就職できたのにまたもや兄のことが広まり、会社にいづらくなってしまった直貴に、社長はこんなことを言います。

我々は君のことを差別しなきゃならないんだ。

なぜこんなことを言う人の存在が救いになるのか? ぜひ読んで確かめてみてください。そして兄弟が交わした最後の手紙の内容は……。“言葉にできない”感動を味わえます。

映画版では剛志を玉山鉄二、直貴を山田孝之が演じるようです。直貴のガールフレンド役は沢尻エリカ! 豪華キャストですから楽しみですね。公式サイトによれば11月3日~公開予定とのこと。お見逃しなく。

次は絶望的な刑務所生活に奇蹟を起こした男の物語>>

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