宮部みゆき3年ぶりの現代ミステリー『名もなき毒』の主人公は、『誰か』で初登場した杉村三郎。彼は社内報を編集する“普通”の会社員。ただし、妻の父は日本有数の財閥企業の会長だったのです。
いわゆる“逆玉”に乗ったものの、お人好しで野心はゼロ。そんな杉村が今回遭遇する事件とは?
この世に存在する見えない“毒”とは?
『誰か』につづく、シリーズ第2弾。 |
とにかく本書を読むと、この原田いずみというキャラクターが強烈に印象に残ります。子どもの頃、クラスにひとりはいた嘘つきの女の子。もしそういう子が、より酷い嘘をつきづづけて大人になったら? 小説も嘘の一種だし、他人を傷つけないための優しい嘘もありますが、いずみの嘘は周囲に災厄をもたらす“毒”。たまたま彼女をアルバイトとして雇ったがために、杉村も同僚たちも酷い目に遭ってしまいます。姿を消し、会社に嫌がらせをするいずみ。彼女のことを調べつつ、祖父の死の真相を知ろうとする美知香の相談に乗った杉村は、毒殺事件の謎にも首を突っ込んでしまうのですが……。
無差別連続毒殺事件と会社の人事トラブル、そして社内報の取材で知った宅地土壌汚染問題。さまざまなピースを“毒”でリンクさせていく構成がお見事! 終盤のいずみとある人物の対決シーンまで、ページをめくる指がとまりません。
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