暑い夏は背筋が凍る怖い話で涼しくなりましょう! ということで、おすすめの5冊をご紹介します。
第5位真梨幸子『孤虫症』
食欲減退本。ダイエットにはいいかも……。 |
夏の暑さに苛立つ主婦の、日記のような、手記のような文章で物語ははじまります。高層の分譲マンションに住み、夫は大手企業の会社員、娘も成績優秀。〈このご時世、私たち夫婦はなかなかの勝ち組だ〉と思っています。ところが、彼女には秘密がありました。それは、アパートを借りて、3人の若い男と定期的にセックスをしていること。あるとき、その男のうち一人が死んでしまいました。しかも全身に紫色の瘤ができるという奇病で。自分の体にも異常があらわれていることを知った彼女は、徐々に精神のバランスを崩していき……。
ねちっこくてグロテスクな描写てんこもり。特に彼女がトイレであるものを見るシーン、夜中に自分の部屋で〈カリカリカリカリ〉という音を聞くシーンにぞーっとします。不快指数100%のホラーミステリです。
第4位桜庭一樹『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』
桜庭一樹の青春暗黒ミステリー。 |
舞台は鳥取の小さな町。主人公の山田なぎさの学校に、ひとりの転校生があらわれます。海野藻屑(うみの・もくず)。地元出身の有名人の娘で、鄙にはまれにみる美少女。ですが〈ぼくはですね、人魚なんです〉と自己紹介し、初日から奇行、暴言、虚言の連発。すっかりクラスから浮き上がってしまいます。リアリストのなぎさは藻屑から距離を置こうとしますが、彼女はなぎさのことが気に入った様子。藻屑の奇行の裏にある事情がわかるにつれて、なぎさの態度も変化していきます。
ひたすら痛ましい話です。13歳の無力な少女がさらされるあまりにも過酷な現実。打開しようにも、中学生だとどこにもいけない。残酷な描写がいくつかありますが、一番いや~な感じなのは、犬の死体が見つかるシーンとうさぎが殺されるところ。
第3位小林泰三『人獣細工』
人間はどこまで人間か。幼い頃から臓器移植をうけつづけてきた女性が知った戦慄の真実。 |
周囲の人々は、父がひとり娘の夕霞に愛情深く接していたと言いますが、彼女はそう考えていません。自分の体に残る、無造作な手術痕。父の不可解な態度。「ひとぶた」という言葉に隠された真相とは? 父が残した資料をあたっていくうちに、驚くべき事実がわかります。
移植手術をした場合、その前の自分とあとの自分は同じだといえるのか? 体の何%まで人間だったら、人間といえるのか? 考えれば考えるほどわからなくなる。自分がほんとうに人間であるという証拠を探し続けた夕霞の末路。怖いけれど、悲しい物語です。
同時収録の「本」は、ある本を読んだ人たちがつぎつぎとおかしくなっていく話。その狂気のあらわれ方はどこか滑稽なのですが、だからこそ怖い。恐怖と笑いは紙一重なのだなと思わせる作品です。
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