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背筋の凍るミステリー(2ページ目)

暑い夏は背筋が凍る怖い話で涼しくなりましょう! ということで、おすすめの5冊をご紹介します。

執筆者:石井 千湖

第2位江戸川乱歩「芋虫」『江戸川乱歩傑作選』ほか所収

江戸川乱歩傑作選
今読んでもまったく古くない。古典の超名作。
発表したときに警察庁の検閲課から全編削除を命じられたという、いわくつきの作品です。

ある軍人が戦地から帰ってきます。世間は英雄として迎えますが、その代償はあまりにも大きいものでした。彼は手足を失い、鼻も口も原型をとどめていなかったのです。あるのは視覚と触覚だけ。彼の美しい妻は、献身的に面倒をみます。ところが夫婦生活の本当の姿を誰も知りませんでした。

夫の体は〈黄色い肉のかたまり〉。まるで芋虫のようだと妻は思います。無力な夫をいじめては、愛撫することで情欲さえおぼえる。そのことに彼女は罪悪感も感じています。そんなある日、彼女は夫に酷いことをしてしまい……。

衝撃的なラストシーンは忘れられません。グロテスクだけれども、美しくて悲しい。今読んでも、ぜんぜん古くない傑作です。

第1位ジャック・ケッチャム『隣の家の少女』

隣の家の少女
世にも残酷なボーイ・ミーツ・ガール小説。
舞台は1950年代のアメリカ。チャンドラー家の父は政府が推奨するシェルターを自宅の地下室につくって蒸発しました。残された妻のルースと3人の息子が住む郊外の小さな家に、孤児になったメグとスーザンの姉妹がひきとられるところから物語ははじまります。

メグは可愛くて活発な優等生。チャンドラー家の隣に住むデイヴィッドは、小川のほとりで偶然メグに出会って淡い恋心を抱く。ここまではよくあるボーイ・ミーツ・ガール小説です。ところがだんだん読むのが苦しくなります。なぜなら、メグはシェルターに閉じ込められ、裸にされ、熱湯を浴びせられ、酷い言葉を体に刻みこまれることになるから。新しい保護者ルースと子どもたちによって。

デイヴィッドは手は出しませんが、メグの裸が見たいのと、状況がどこまでエスカレートするのか知りたい一心で地下室に通います。ルースたちの味方のふりをしつつメグを助ければ〈自分だけにはさわらせてくれる〉と画策までする。しかしデイヴィッドはギリギリのところで良心をめざめさせ、メグを救おうとするのですが……。

ルースは下品だけど色っぽくて、きれいなお母さん。子どもたちにも優しく、話の分かる大人です。そのルースがなぜ、メグだけに悪意をむきだしにするのか。わからないから怖い。イヤだけど読むのがやめられない。そんな1冊です。

<関連リンク集>
手に汗握るサスペンス・スリラー・ホラー…ページをめくるのがやめられないハラハラ・ドキドキ感を味わうならこのカテゴリ。張りつめた緊張感で一気読みしてしまうサスペンス小説、背筋も凍る恐怖を堪能できるスリラー・ホラー小説をどうぞ。
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