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祝!文庫化の傑作をイチオシ

1月の文庫新刊のイチオシは、女子高生と軍人と天才学者が入り乱れて大活躍する気宇壮大なエンターテインメント。2月の新刊も先取りして紹介!

執筆者:石井 千湖


当月と翌月発売のものからそれぞれいくつかピックアップして、小説世界に思わずのめりこんでしまう本をご紹介します。

まずは1月に発売になったものから2冊。

【1月のイチオシ】パワーに圧倒される池上永一『レキオス』

レキオス
基地に生まれた少女・デニスのルーツ探しと、謎の将校の陰謀が交錯したとき、見たことのない世界が目の前に現れる。一気読み確実の超絶エンターテインメント。サマンサ、最高。
ハードカバーを探したけれど手に入らなかったという方に朗報。2005年『シャングリ・ラ』で大ブレイクした池上永一の傑作が文庫化しました。

舞台は沖縄。基地に生まれた混血の女子高生・デニスは、チルーと名乗る怨霊にとりつかれ、仕方なく彼女の人探しを手伝う。一方、嘉手納基地ではキャラダイン中佐が「プロジェクトL」と呼ばれる作戦を進行していて……というストーリー。

チルーはなぜ怨霊になったのか? デニスのルーツは? キャラダインの目的は? 「レキオス」とは何か? 次々とあらわれる謎が錯綜し、強烈なキャラクターが大暴走。SF、ファンタジー、ミステリー、コミックノベル、ビルドゥングス・ロマンなどなど、さまざまな物語の面白さをチャンプルーのようにかき混ぜた、一大エンターテインメントです。

本書には池上作品史上最強最悪最高のキャラクター、サマンサ・オルレンショーが登場します。アメリカが世界に誇る天才学者で、絶世の美女。ところが、常人の理解を超える変態なのです。趣味はコスプレと露出。口を開けばシモネタばかり。「レキオス」の謎を自分の研究欲のためだけに追い、状況をさらに複雑化させる元凶となります。挙句の果てには「あるもの」を改造して自分専用のスーパーコンピュータにするのですが……。あまりのマッドサイエンティストぶりにのけぞること請け合い。脇役にもかかわらず完全に主役を食っている、天上天下唯我独尊のサマンサの魅力にはまってください。

【1月これも注目】『サム・ホーソーンの事件簿』4巻は新キャラクターが登場

サム・ホーソーンの事件簿IV
アメリカの田舎町ノースモントの医師兼名探偵のサム・ホーソーンが活躍する人気シリーズ第4弾。
1920年代から30年代の、古き良きアメリカ。サム・ホーソーン医師が田舎町で起こった事件を解決する人気シリーズ第4弾。なぜか不可能犯罪にばかり遭遇してしまうサム・ホーソーン先生。今回はどんな謎を解くのか……?

銀行強盗を乗せた自動車が突然消えてしまう「黒いロードスターの謎」、通電フェンスに囲まれ猛犬が番をする農家でFBIが監視するなか殺人が起きる「要塞と化した農家の謎」など、サム・ホーソーンもの12編と、西部探偵ベン・スノウものの短編「フロンティア・ストリート」が収録されています。今回の読みどころはなんといっても3巻で結婚したエイプリルの代わりに入った新しい看護婦、メリー・ベストとの出会いが描かれていること。エイプリルもお母さんになって登場します。

年老いたサム・ホーソーンが昔をふりかえって語るという設定になっている、このシリーズ。サムおじいさんが話の最初や最後で必ず御神酒(おみき)を勧める(もしくは自分で飲む)のです。昔話における「むかしむかし」やパタリロの「常春の国マリネラ」みたいなお約束があって楽しい。殺人は起きますが、どこかほのぼのした本格ミステリーです。

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