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行きつけの店で人生を学べ

人生を学ぶには、くだらない見栄やプライドを捨てて、あらゆる困難に立ち向かう必要がある。それには、より多くの行きつけの店を手に入れるのが近道。憧れの店の常連になり、かっこよく歳をとろう!

大脇 克浩

執筆者:大脇 克浩

男の夜遊びガイド

あなたが素っ裸で来てくれるなら、どうぞ

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著者が愛したのは、店の雰囲気であったり、従業員の気配りであったり。山口瞳氏の名著『行きつけの店』は必読!
遅まきながら30歳になって初めて、『行きつけの店』というやつを手に入れた。今春のことだ。高田馬場にあるカウンターバー『かわせみ』という店で、アルコールが楽しめるのはもちろんのこと、持ち込みができる、ツケが利く、そして安い、というゴキゲンなスタイルだ。

と聞くと、いったいどこで見つけてきたんだと質問されることが多いが、実はココ、昔お世話になったFさんがやっている。カウンター5席しかないこぢんまりとしたお店で、僕のようにかつての部下や、昔の知り合いが来れば、すぐに満席になってしまう。

Fさんの口癖は「借金して始めてないから、飽きたら明日にでも店を閉めれる」だった。ここをかつての仕事仲間との憩いの場と位置づけ、お金にならない僕のような客でもいつも、ニコニコ迎え入れてくれた。

Fさんは元々、小さな出版社の社長で、僕と同じ雑誌編集者だ。ここでは、「客とマスター」の関係ではなく、いつまでも「社長と社員」の関係。食材が足りなくなれば、コンビニまで買い出しに走ることも多い。気取らず、見栄も張らず、僕が心から素直になれる、そんな場所だ。

かつて僕は、Fさんから「編集とは、人と人とを繋げる仕事」だと教えられた。ここは、店主の「編集」への興味がモロに剥き出しになっている。言い換えれば、「編集」への興味がない客が来ることは、皆無に等しいと言っていい。

このように、行きつけの店で人生を学ぶには、自分の人生観やライフスタイルはいったん忘れ、素っ裸になるべきである。気に入ったお店の常連になりたいなら、まず自分から全裸を見せることが不可欠である。

店側もそれを分かっていて、無理に一見さんを呼び込もうとはしない。あなたが素っ裸で来てくれるなら、どうぞ。といったスタンスだ。
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